ぺんぎんうどん

ちょみ

ぺんぎんの飼育法とかうどんの通販をやってるワケじゃありません

◆ 海に宿る月 えぴろーぐにゃ

自作小説

http://www.nicotto.jp/blog/detail?user_id=1016286&aid=51213943 からの続きにゃ


◆◆◆◆◆


 台風の通り過ぎた縁側が、陽の光を浴びて乾いてゆく。
「佐和子、佐和子?」
「……ん?」
「あんたなんていう所で寝とるの。もしかして一晩中ここにおったの?」
「え? そんなわけないじゃない。ちゃんと布団で寝たわよぉ」
「やったらええけど……早く起きすぎて掃除でもしよったの?」
「うーん……」
 はっきりとしない寝起きの娘を心配して
「朝食は私が作るから、早ぉ顔でも洗っておいで」と母親が急かす。
 鈍く重たい体を引きずるように動かすと、縁側に赤いしるしがついた。
 慌ててトイレに駆け込む。

「おかーさん、私生理始まったみたい」
「えぇ?」
「どうしよう」
「とりあえず私の……」




 暑さはトンボが姿を消す季節と共に一段落し、山が蜜柑で染まる。
 二学期が始まり、佐和子も制服のスカートを翻し、自転車を漕ぐ。
「ヨシ婆ちゃーん」
 いつもの筏でいつも通り、ヨシ婆は網を縫っている。
「スーパーで特売の饅頭買ぉてきたよ、一緒に食べんね」
 桟橋に足を踏み入れる佐和子を、ヨシ婆は驚いて迎えた。
「佐和ちゃん、ようこっちに来れたなぁ」
「何?」
 佐和子にはヨシ婆の驚く意味が解らない。
「海、いけんかったやないか。こんな桟橋もよう渡れんくらい」
「そうやったかなぁ」
 佐和子の記憶から、怖かった海はもう無い。揺れる筏にちょこんと座り、饅頭を「はい」と手渡す。それを受け取りながらヨシ婆はふっと呟いた。
「海神様んでも合ぅたかねぇ」
 小さな呟きだったが、波音に消されることなく、それは佐和子の耳に届いた。
 ―― 海神様か知らんけど ――
 今は何故だか、ひたすらに海が恋しい。
「何か大事なもんは、あったような気かするわ」
 ふっと沖を見つめて佐和子も呟いた。
 夏を過ぎて妙に大人びた顔を見せる佐和子に、「まぁそんな事もあるわなぁ」と、ヨシ婆は網を縫う手を休めて饅頭を頬張った。
 その働く手を見つめながら、佐和子は涼しい潮風を頬に受けながら、黙って笑んだ。





 いつかまた、会えるだろうか……
 手と手を繋いで歩いた、あの日に……





◆◆◆◆ 了 ◆◆◆◆



お付き合いくださったみなさま、ありがとうございました。ぺこり


#日記広場:自作小説

  • ちょみ

    ちょみ

    2013/08/25 21:22:56

    >あびちゃま

    最後まで読んでくださってありがとう~(´▽`)

    年寄と子供は、どうやらあたしの書く物のメインテーマのようです(^_^;)
    海と宇宙は、知識が少々足りなくても、ファンタジーという位置づけすることで
    かなり大胆に展開できるので好きです(マテ)

  • ちょみ

    ちょみ

    2013/08/25 21:20:47

    >ことみさん

    最後まで読んでくださってありがとう~(´▽`)
    ごめんね!><
    何でか時々コメントに気付かないでスルーしちゃってます!><
    気付けて良かった~
    また気持ちの良いお話が出来たら掲載しますね^^
    ありがとう

  • ちょみ

    ちょみ

    2013/08/25 21:20:00

    >かいじんさん

    最後まで読んでくださってありがとうございました~(´▽`)

    思い出は遠ざかっても、大切な気持ちをはぐくんだ記憶は
    大切に残されるといいなぁ^^

  • あびにゃんこ

    あびにゃんこ

    2013/08/24 18:11:36

    おつかれさまでした^^
    海辺の辺鄙な情景がいいなぁ~って思っていたら、思わぬ展開でちょっと驚きました(@w@
    深海はまだまだ謎だらけだし、なにかが潜んでいてもおかしくないよね。
    ヨシ婆がいい味だしてるなぁと思っていたけど、締めも彼女でしたか^^
    面白かったです^^

  • ことみ

    ことみ

    2013/08/20 00:34:50

    ようやっとよめました、めっちゃ感動しました。

  • かいじん

    かいじん

    2013/08/06 21:00:07

    季節が変わればひと夏の思い出ですね。

    季節は巡り、思い出は遠去かる・・・

  • ちょみ

    ちょみ

    2013/08/02 15:50:53

    >ゆきちゃま

    読んでくれてありがとう~(´▽`)
    元が同じ種族だから遺伝子的には問題ないだろうから
    あとは進化途中での変化への対応かぁ~
    卵子がオスの体内にいる間に適応する! というのではどうだろう(^_^;)
    女も男も、役割分担があいまいな時代になったような気がします~
    育児しないんならしっかり稼いでこいやぁとか言えたららなぁww

  • ゆき☢しま

    ゆき☢しま

    2013/08/01 16:54:47

    やっと読み終わったにゃ~~www
    子育てしてくれると助かるにゃ~~
    けどさ・・・
    もともとが 同じ種族なら子供はできるのか?←
    ちょっと疑問・・・
    北みたく拉致する???

  • ちょみ

    ちょみ

    2013/07/27 20:44:09

    >紫草さん

    もしかしたら、私達が知らないだけで海の底には実際に居るのかもしれません^^
    海は宇宙と同じくらいに謎です~

    いつかまた会えるなら…と匂わしながら終わらせるの、
    どーしようと悩んだのですが、やっぱりこれで良かったのかな^^

    最後まで読んでくださってありがとうございました♡

  • 紫草

    紫草

    2013/07/27 17:20:02

    海に逃げた人間で、タツノオトシゴのような種族。
    見事な落としどころでした。

    彼女のなかにも、僕のなかにも、海が特別の想いを込めて漂っているんですね~
    もう海が怖くないなら、いつかまた会えると信じたい^^

  • ちょみ

    ちょみ

    2013/07/23 22:41:53

    >まゆさん

    ドロドロのメロドラマ的展開に!
    でも小さい子供がお母さん恋しさにやってくる頃には、
    お父さんの方は既に海の藻屑だろうから問題ないかしらww

    最後まで読んでくださってありがとうございました^^

  • まゆ

    まゆ

    2013/07/23 18:26:20

    意外な展開にビックリでした。
    タツノオトシゴにたまごを提供するとは!

    将来、恋人とあるいていると、小さい子供が来て、「ママ~」とか言いそうで……w

  • ちょみ

    ちょみ

    2013/07/22 22:11:51

    >百目木さん

    最後まで読んでくれてありがとうございます♡

    何て言うか…あたしの書くものって、婆ちゃん率が高いですねぇw
    今別口で書いてるのも主役は婆ちゃんと小学生の子供ですよ^^;

    あぁ…サークルのお題も練れてるのに、書いてる時間が無い~><

  • 百目木

    百目木

    2013/07/22 19:10:02

    長丁場の連載、お疲れさまでした。以下の羅列は感想です。

    ・少年のような超自然の生命体を軸に何作も展開していけば、
     手塚の火の鳥三部作などとは一味ちがった、
     海を舞台にした壮大なオペラ物まで作れそうですね。

    ・常に現在の時空に引き戻す役割の、ヨシ婆の設定がいい♪

    ・いつものことですけど、死と性愛のはざまの描写がお上手♪

    ・タツノオトシゴ持ち出すことで、懐胎がベタなエロスにならず、
     水棲動物の胎児が、海中で生きていく世界が垣間見えそう。


  • ちょみ

    ちょみ

    2013/07/22 12:30:43

    >ぷくぷくプーちゃま

    最後まで読んでくれて、ありがとー><
    や、七夕と聞いて、昔こういう話書いたなーと思って探してみたら
    かなーり稚拙なものが出てきたので、ちょっと書き直してUPしただけなので
    負担は殆どなかったので大丈夫です(´▽`)
    十五夜は…どうなるか解んない(^_^;)

    模擬、どうしよう~
    介護福祉士の時は会社が負担してくれたけど、
    ケアマネは経費の対象外だからなぁ(^_^;)
    個人で行ける、交通費とかかからない所の講習だけ、やってます~

  • ちょみ

    ちょみ

    2013/07/22 12:23:47

    >みいこさん

    ウサギさんじゃなくてごめんなさいなのです~
    海は生命の源なので、今でも新しい種族を生み出しているような気がします^^
    いずれ私達を脅かす何かも、産まれてきそう…

    最後まで読んでくださってありがとうございました(´▽`)

  • ちょみ

    ちょみ

    2013/07/22 12:18:43

    >おやじパパりん

    うむ、20年後には海の種族も繁栄に成功して増えているだろうから、
    陸の種族と交わろうとして進行したら戦争になっちゃって、
    佐和子の息子が、父さんと母さんが出会わなければこんな戦にはならなかったのに!
    と後悔して深海を彷徨ってたら時空の歪みを発見して、過去に戻る事が出来て
    父母が出会う前に行っちゃって、
    二人が出会ったら戦争が起こる…と、母を殺そうとするんだよ!
    的な展開を誰か書いてくれないかなぁ…
    戦争関連は武器とか色々、知識が無いので書けません~(ノДT)

    最後まで読んでくださってありがとうございました(´▽`)

  • ちょみ

    ちょみ

    2013/07/22 12:14:00

    >やあさん

    最後まで読んでくださってありがとうございました~(´▽`)

    ニコで三回以上かかる連載をするのは、やっぱり勇気が要りますねぇ^^;
    皆さん毎回コメントくださって、逆に申し訳ない…
    それにふさわしい読み応えのあるものが書けていたなら、と思います^^

    まぁ…ビジュアル的には、くらげのお化け…?ww

  • ぷくぷくプー

    ぷくぷくプー

    2013/07/21 22:17:09

    ちょみちゃん・・・ありがとう<(_ _)>
    思いつきでふった七夕のお話・・・書いて貰って本当にありがとうです\(^o^)/

    毎回ワクワクで、楽しみで、またまた、作品書いて下さいね。
    秋になったら、十五夜のお話書いてほしいなぁ~~~
    って、やはり月が関わってくるのかしら・・・

    試験が終ってからでいいからね(*^_^*)
    9月1日は模擬受けるのかしら・・・??(^_^;)

  • みいこ

    みいこ

    2013/07/21 16:58:06

    おおお~・・・
    なんつーか・・・深いです・・・

    てっきりうさぎさんかと思ってたら・・・

    海は神秘的な存在だから、きっとどんなものがいたって
    不思議じゃないんだろうなあ~・・・としみじみ。

  • おやじパパ

    おやじパパ

    2013/07/21 15:00:49

    で、
    20年後に海の一族が地上に進行するとき、地上人側についた佐和子の息子の物語はいつからはじまるの?

  • .やあ

    .やあ

    2013/07/21 14:56:39

    おおお^^

    すんごくいいお話やったよ~^^

    うんうん^^ 少年の正体は海神さまやったんやね・・・^^

    やから幼い佐和子を助けて、その後も見守って来てくれてたんやね。

    てっきりくらげのお化けかと思ったよ・・・^^; ごめん^^;

  • ちょみ

    ちょみ

    2013/07/21 13:56:39

    何度も間違えそうになった事ー

    同時進行で別口に書いてる作のお婆ちゃんが「佐代子」(>▽<)ノアハハハハ