☆制限能力者
原則として全ての人間は権利能力の面で平等であるとされています。しかし、民法では法律行為を制限されている人についても定めています。すなわち、契約などを自分だけですることができない人と言うことです。このように行為能力の面で制限された人のことを「制限能力者」と言います。ただし、このように制限能力者という制度を定めたのは、制限能力者とされる人が契約などの面で不利にならないように保護するためです。制限能力者は以下の4種類があります。
1未成年者
「未成年者」とは、20歳未満の者のことです(婚姻すれば成年者として扱われます)。未成年者は単独で法律行為をする事ができないのが原則です。法律行為をするためには保護者(法定代理人)の同意が必要です。また、法定代理人の同意を得ないで行った法律行為は取り消すことができます。
保護者は親権者、親権者がいない場合は未成年後見人になり、その権限は同意権、代理権、取消権、追認権です。
2成年被後見人
以前は「禁治産者」とされていましたが、平成12年の法改正により「成年被後見人」へと移行しました。「成年被後見人」とは、「精神上の障害により、事理を弁識する能力を欠く状況にある者で、家庭裁判所の後見開始の審判を受けた者」とされています。成年被後見人の行為は、日用品の購入その他日常生活に関する行為を除き、原則として取り消すことができます。
保護者は成年後見人になり、その権限は代理権、取消権、追認権です。
3被保佐人
以前は「準禁治産者」とされていましたが、平成12年の法改正により「被保佐人」へと移行しました。被保佐人とは、「精神上の障害によって事理を弁識する能力が著しく不十分な者で、家庭裁判所の保佐開始の審判を受けた者」とされています。つまり、成年被後見人に比べると程度が軽くなり、未成年者と比べても自由度が高いと言えます。そのため、被保佐人は原則として単独で有効な法律行為を行うことができます。ただし、借金をするなどの重要な行為には保佐人の同意が必要です。
保護者は保佐人になり、その権限は同意権、代理権、取消権、追認権です。
4被補助人
被補助人の制度は改正前の民法にはありませんでした。法改正に伴い、新たに創設された制度です。これまでの禁治産・準禁治産制度ではカバーしきれなかった社会的弱者を救済するための制度と言えます。被補助人とは、「精神上の障害によって事理を弁識する能力が不十分な者で、申立てと本人(被補助人)の同意を条件として家庭裁判所の補助開始の審判を受けた者」とされています。つまり、被保佐人ほどではないのですが、通常人と比べて判断能力が劣っている者と言えます。被補助人は、被保佐人と同様に、原則として単独で有効な法律行為を行うことができます。ただし、家庭裁判所に申立てた範囲内の行為については保護者である補助人の同意が必要です。
保護者は保助人になり、その権限は同意権、代理権、取消権、追認権です。