☆まめだ
これは秋らしい落語ですが、案外秋らしい落語は少ないような気がします。
【スジ】
大部屋の役者が仕事が終わって雨の中を歩いて帰る途中のことである。傘の上が重くなったのであるが、傘には異常がない。おかしいなと思ったのであるが、豆狸の仕業と気がつく。そして、傘をさしたままトンボを切ると、豆狸は投げ飛ばされてしまうのであった。
ところで、その役者の母親は貝殻に詰めた膏薬を寺の境内で売っいたのであるが、その翌日から膏薬の売上げが合わなくなったとこぼすようになる。それも連日で、売上の中には必ずイチョウの葉っぱが入っているという。
また、いつも見かけんような着物を着た陰気な男の子が買いに来たというのであるが何か関係があるのかなと考えるがよく分からないままである。
ところが、突然イチョウの葉が入ってなくて、銭がちゃんと合うようになった。
「不思議や」
そして次の日、寺の境内で豆狸が死んでいると騒ぎになっていた。よく聞いてみると身体中に貝殻が付いているという。ここで、自分が投げ飛ばした豆狸の仕業と分かったのであった。つまり、豆狸は膏薬の使い方を知らなかったのである。
「これ、わたいが殺したようなもんだんねん。どこぞ、境内の隅になと埋めたっとくなはれな。どんな安もんのお経でもエエさかいに、あげたっとくなはれ。線香の一本でもあげとくなはれな」
大勢の人が立ち去った後、秋風が吹いてイチョウの葉が、ハラハラ、ハラハラ。
「お母ん、見てみなはれ。狸の仲間からぎょう~さん香典が届いたがな」