ぷち☆さちねこ日記

さちほ

お気に入りコーデ発表の場と化しておる。

星の魔法少女~誕生物語~ 【その1】

自作小説

 ――レンズ越しの世界には、何が見える?

 私には・・・悪意が見える。

 罵倒こそされないけれども、それよりも辛く、陰湿な――嘲笑する少女たちの束。

 彼女たちは、極めてマイノリティな性質を持つ人間には、容赦なく「排除」の罰を与えるらしい。

 昼間はそんな黒い群ればかりを、視界いっぱいのレンズに映し。
 
 私はただただ、夜が来るのを待つ。

 それも、星が綺麗に瞬く、晴れやかな夜空を・・・。

 夜に空いた時間ができると、私はひとりで、近くの丘へと向かう。

 右手には、もう幾度となく読み返し、角が擦れた星座図鑑を。
 左手には、専用のものとは程遠い、形ばかりの望遠鏡を。

 夏が過ぎ、秋の風が色濃くなった丘は、星空も幾分澄んでいるように見えた。
 広大な暗幕の内に包まれた星々は、まるで宝石を砕いたような煌めきだ。

 丘の頂上へと登り、立ったままその光景を見つめる。

 ここは、私だけの秘密の場所。
 そして、何よりも心癒される、お気に入りの場所――。

 しかしその日は、私以外にもうひとり、丘にやってきた者がいたのだ。
 先客なのか、私のすぐ後から来たのかはわからないが。

 「ニャーオ」

 後方からの鳴き声に振り返ってみると、そこには一匹の黒猫がいた。
 しっぽをゆるく振り、私の顔をじっと見ている。

 「ニャーオ」

 ふと、もう一声鳴いたその猫の首元で、何かが揺れたのに私は気付いた。

 「・・・時計?」

 一瞬、飼い猫の、首輪の鈴かと思ったのだが。
 ちらりと揺れたのは、赤みがかった、小さな丸い文字盤だった。

 「お前、変わってるねぇ・・・。首輪に、鈴じゃなくて時計なの?」

 その文字盤を近くで見ようと、苦笑しながら、私はその場に屈み込んだ。

 そして、そのほんの数秒の後。
 不思議な黒猫の体は、無数の光の粒に包まれて・・・その姿を変えたのだった。

  【つづく】


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