大潮

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オレンジ色のビーズ

友人

オレンジ色のビーズが届いた
受け取っていいものかどうか

考えた

オレンジ色のビーズは「知り合いA」のものだった
Aとわたしには共通の友人がいて、その友人にAが渡したものだ
本当にわたしがもらっていいかな?
疑問だった

30年ぐらい前
彼女Aは恋人Bがいた
Bは、Aとわたしが参加するグループの会議にAの同伴者として出席し
わたしがBに対して事務所への出入りを禁止したと攻撃したという
わたしのいないところで

わたしがBに出入りしないでといったのは事実だった
Aの恋人Bは
わたしの知り合いCの夫だった
Bは妻Cに家庭内暴力をはたらいていた
「妻は受動的な女なのでベッドからけり落としたこともある」と
Bがわたしに電話をかけてきて語ったときだ
わたしは「女性に暴力をふるう男性は女性問題を扱うこの事務所にではいりしないでください」と告げた
女性への暴力を女性に話すことは
話すことそのものが性暴力であり
聞いた相手が打撃をうけようがうけまいが精神的苦痛を与えることだからだ

AとCは別のグループでわたしはそれぞれで知り合いだった
きっとAとCは会ったことはないだろう
BとはBの職業である取材をうけて知り合った
そしてわたしはしばらくの間
BとCが同じ名前であることで夫婦と結びつける情報はなかった
ある日「女性と創造力」グループのCの悩み苦しむ長い手紙を
会報の編集担当として読んだ
Cの手紙には
夫から性生活が受動的であることを理由に
ベッドからけり落とされたと書いてあった
まだ、女性に対する暴力という概念が受け入れられない時代
「愛の鞭」という暴力が夫婦愛として組み込まれていた

AはなぜBに恋するのだろう?
AはBの社会を見る視点が素晴らしいと力説した
CはなぜBと離婚しないのだろう?
誰にだってどちらの立場にもなる可能性はある

女性はもっと自由に行動的にならなければならないとBはいう
その考えは好ましい
しかし、なぜ、男性が女性の生き方を良し悪しと判断するのか
言葉がどんな構図のなかで使われているのか
その構図をみる視点は女性が女性自身で創るものだ
愛とか恋以前に、人間として尊重しあう関係があるのか?
「夫の経済力に依存し性に受動的な女性」には暴力による制裁を与え
「自由で行動的な女性」には恋人である栄誉を与える
わたしには「制裁すること」と「栄誉を与える」ことは
暴力をふるう男の「飴と鞭」だと観えた

夏合宿にBが子どもを連れて参加し、
Aがかいがいしく世話をしたことを聞いて
私の怒りは頂点に達した
子どもを直接巻き込むなんて
わたしはAも許せなくなった

人は一瞬の後に変わるものだと知っていながら
長い時間が過ぎて三人と距離が離れた
相変わらずBはCと生活している

今、Aは他の男性といっしょに暮しているそうだ
Aは輝くオレンジ色のように華やかな呼吸をしているだろうか
この美しいオレンジ色のビーズのように

わたしはこのビーズを受け取ることにした