大潮

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伏見稲荷 その4-京都スピリチュアルツアー

自作小説

舞はこの二人に下鴨神社でも驚かされた。
長い参道を歩いている途中で実留が「歩けないほど足が痛む」と言い出した。
「左手に何かあるわ」と実留が指さす方向に佳が走って行く。
「見てくる」
舞は佳を追っかけた。何かあったらひとりより二人のほうがいいだろう。
「ここです!池が埋め立てられている!これだわ!」
舞には何も感じられないし、何だか理解しがたい。
へ!池が・・・埋め立てられているですって?これだわって何?
佳は実留のところに引き返した。
実留は目を閉じると大きな深呼吸をした。
「埋め立てられた池に何か伏せられているけど、伏せの力が弱いわ。みんなは何ともないの?」
こんなとき、感じやすいのって辛いと実留は思う。
この場から少しはずれれば痛くなくなるはずだと、実留は足をさすりながら歩き出した。
「こういうことってよくあるの?」
「うん。この先行っちゃいけないってとき、足が先に進めなくなるの。」

「悪いことではないのよ」と実留は話した。
 
 
予約していた病院へ行こうとしたら、地下鉄の地上口階段をどうしても降りられない。これは行っちゃだめってことだとあきらめて、電話をかけると、先生は出かけてしまっていていないことがわかったというのだ。
よく虫の知らせっていうけど、脚が動かなくなるなんて、初めて聞いた舞だった。

そんな話を研究会ではしたことがない実留を好ましく思えた。当然のこととふるまう佳の様子は友人として好ましかった。
「だってね、こんな話を受け取れない人もいる。野球に興味のない人に野球の話するのと同じだよ。興味ない人はどう受け答えしていいかわからないでしょ。だからしゃべらない。スピリチャルなおしゃべりってね、突然、この人に話さなくちゃって前後の経過や場に関係なく脈絡もなく始まるのよ。話した相手も同じことを考えていたり、関係深かったりする時なの。ひらめきを信じることなのよ」
そんな風に説明されると舞は理由なしにうなづけてしまうのだった。

一メートルも進むと実留の足の痛みはけろっとなくなった。
「昔、あの埋め立てられた池に向かって水が流れていたはずだけど、どうしたんだろう。無理押し通すとエネルギーが歪むよ。」
下鴨神社は糺の森にある。いろいろな神様が集められている。明治の廃仏毀釈政策でエネルギーを表す「自然神」があるべき場所から人間の手によって移動させられたのだ。
もう、エネルギーがこんがらがって、めちゃめちゃに混乱している。と実留は説明した。

「この土地は水の場だね。水のある場所にエネルギーを調和させる印を置いていこう」
井戸がたくさんある神社だったが実留のお眼鏡にかなう水の力がなかった。
観光になっている炊屋を出て、石の敷かれた参道へ回る。
と、山水を引き込んだ水がどうどうと流れ込んでくる池がある。
舞は「これはサラスバティーだわ!」と叫んだ。人からどうしたの?と聞かれてもなんだか自分でもわからないのだった。とにかく言葉が出ちゃったのだ。こんなふうになったのはこの二人と時間を過ごしているせいに違いなかった。舞はなんだか顔がゆるんで笑い出してしまいたいほどだった。
実留は「ここにしよう」と決めた。
さっき足が痛くなった地点で平たい石を選んだ。その石に青緑色の紋様を書いた。
「これはね、水の紋様なの。水のピュアな力を表しているの。」
実留は佳に石を渡した。
「わたしが投げる仕草をするから、同時に同じ仕草で同じ方向にその石を投げてほしいの」
佳は力強くうなづいた。
実留は池に向かって立つとしばらく水を見つめていた。そうして大きく深呼吸する。
何かを持っているかのように右手を丸めると池の真ん中に向かって緩やかに腕を回した。

「ぼくはそれも知りたい。それはどんな紋様?」
सरस्वती
経丸が差し出す石に実留はサンスクリットで書いた。
「水の女神サラスヴァティーの文字よ。ここは日本だから日本語でいいんだけど、あの池に浮かんでいた形はサンスクリットだったの。閃いたのよ。この山水は鞍馬山がある方向から流れてきたんじゃないかって。鞍馬山は山も水も神様で大事にされてきたのよ。鞍馬山に伝わる唄はサンスクリットに節をつけたものだわ。舞がサラスヴァティーだって言った流れとも合うなって。サラスヴァティーはサンスクリットで水の女神の名前だからね。」
「そうか!知ってるよ、その歌」
「経丸、歌えるの?」
二人が節回しを付けて鞍馬に伝わるという歌を歌う。
佳は実留に聞く。「どうしてそんな唄を知っているの?」
「鞍馬寺に満月祭というお祭りがあるのよ。それが好きで何度も来ているの。そこで歌われる歌なの。」
佳は池に投げ入れた石に書かれた紋様を思い出していた。
経丸は実留が書いた石を大事そうに小さな袋に入れた。
「この石を深草の山水に見せていい?」
「深草の山水が流れているところに案内してくれるのね。うれしい」
ー続くー

  • 大潮

    大潮

    2014/02/25 02:14:09

    深夜放送の「いなり こんこん 恋いろは」ですか。初めて知りました。早速調べてみます。
    伏見稲荷は 10数年前にした京都旅行で現実に起きた話をアレンジしたものです。
    どこが現実で何が脚色か楽しんでいただけるでしょうか。
    佳はリアルの友達です。二人でスピリチュアル旅行を楽しんでいます。

  • みかさ

    みかさ

    2014/02/24 23:48:36

    稲荷神社とは旬ですね(^-^)
    只今自分は深夜放送中の伏見稲荷大社が舞台の「いなり、こんこん、恋いろは。」にハマっているわけでして…
    さてどう話が展開するか…
    気になります(^-^)