アマヤ

俺は何故奴に勝てない……

恋愛


さて友人に報告を頼まれたので

せっかくだから報告を小説形式で説明しよう




俺「ごめん」

彼「駄目」

俺「ごめんなさい」

彼「駄目」

俺「ゆるしてください」

彼「駄目」


ああ…なぜこんな事になってしまったのか

それは数十分前の事…


「悪夢の一日」 前編


今日は彼女とデートだ

なんでも仕事が早く終わるとかで昼前にうちに来るらしい


俺「♪~♪」

ちなみに、今の時刻は9時10分前。

少し前、メールで『仕事が終わった』と報告がきたので、

俺は、鼻歌を歌いながら部屋の掃除をしている最中だった。


(社会人は大変だな。そういう俺も4月からは社会人だけど)


今終わったという事は、

一度家に戻り、準備を終えてから来るのだ

昼前に来るといっても、まだ時間はあるだろう。


雑巾がけ、衣類の片付けなどを終え

掃除機をかけようと思っていると…


突然、ブーッブーッと

ポケットに入っている携帯のバイブが鳴った


俺「何だ、掃除の途中で…」


えーと…

ああアイツからのメールか。


携帯のスリープモードを解除し

内容を確認する


『今、家の前にいるんだけど』



俺「………」

――――……は?


部屋の扉を勢い良く開け

駆け足で玄関へ向かいドアを開ける


すると不機嫌そうな顔をして立っている彼女がいた


俺「あ…久しぶり」

彼「やあ。チャイム鳴らしたんだけど?」

俺「ごめん聞こえなかった。てゆーか来るの早くない?」


てっきり、家に一度戻り、

準備をしてから来るとばかり思っていたが


俺「まあ、あがってよ」

彼「うん」

俺「そうだ、これホワイトデーのお返しね。あとこれは誕生日プレゼント」

それぞれ用意したものを手渡す。

ホワイトデーのお返しはゴディバのチョコレート&クッキー。
誕生日プレゼントはくまモンのティッシュケースだ。


俺「じゃあ部屋に――…」

アカン…掃除してる最中やったな

彼「待ったほうがいいかな?」

俺「3分間待ってくれ(ムスカ口調)」


――――
―――
――

掃除機をかけ終わったので

茶の間に顔を出し、彼女を呼ぶ


俺「終わったぞ」

彼「3分以上かかってたね」

俺「やかましい」


パソコン以外、何も無い殺風景な部屋に彼女は足を入れる。

ベッドの上に彼女は座り、俺も隣に座る。


部屋を今一度、見渡してみるが。

掃除したとはいえ、まだ満足できるほど綺麗じゃないな。


俺「悪いな。部屋、片付いてなくて」

彼「ん?綺麗だよ」

俺「そうか…なら良かった」

彼「…」

俺「…」


会話終了...

やばい、話題がないぞ


俺「…あ、本当に久しぶりだな。もう1ヶ月以上あってなかったよな」

彼「うんそうだね」

俺「………」

彼「………」


こうして会ってみると

本当は話したいことがたくさんある筈なのに

すぐだんまりとなってしまう

話題を作るのが苦手な俺の所為かもしれんが


彼「ねぇ、何するの?」

俺「え…何をするって…そりゃあ…」


思わず彼女の胸元に視線が行く

うわっ…デカッ!!じゃない

何を考えているんだ俺は…


彼「ゲームとか何も持ってきてないんだけど」

俺「あ…ああ、そうだよな。仕事終わりだもんな」


―――することがない

その後も必死に話題転換したり

ツイッターの面白い画像を見せ合ったり

仕事の話などもしたが、やはりそれだけではネタ尽きてしまった。

当たり前か……


俺「おりゃ」

彼「うわっ」


沈黙した空間の中…

俺はこの空気に耐えられず

彼女の首筋を掴み、くすぐった


彼「何すんのよっ」

俺「うわぁぁっ!?」


彼女もまた、やられっぱなしは性に合わないのか、

倍返しで、首だけでなく背中まで手を入れてきたのだ


彼「あんた、まだ弱かったんだ」

俺「最近やられてなかったから、びっくりしただけだよ!!」


俺には一つ弱点があった。

それは極度にくすぐったいのが苦手だという事だ。

一言で言ってしまえば、全身が性感帯。

特に首筋、脇腹、膝、背中、耳、手の甲はやられると、

普段の声とは想像もつかない、高い声が出るほどだった。



俺「倍返しには倍返しだよなぁ…センパイ?」


絶対に二度と聞かれたくなかった奇声。

学生時代の黒歴史であるこの声を出してしまった事が、

きっかけでドSスイッチが入り、一気に本気モードへと移行する。



俺「おりゃ!」

彼「ちょっ…!!」

俺「俺、先輩の腹掴むの好きなんだよねwww」

……と、意地悪く笑って見せる


彼「あんた調子にのってんじゃ…」

彼女の手が首へと伸びる

そうはさせるか――…

俺「あれ、この程度?案外大したことないね」

左の手で彼女の腕を掴み、反撃を止める

俺「…ん?先輩、
このお腹………もしかして太ったwwww?」

彼「ああ゛?」

俺「いやぁ、先輩をいじめるのは楽しくていいなぁ。
あ…そうだ、このだらしないお腹…俺が鍛え直してあげようか?」

彼「……怒るよ」


俺「まあwwwアンタじゃ俺の走るペースに1キロもついていけないだろうケドさwww
悔しかったら言い返してみなさい?言い返せる状況じゃないと思いますけどねwww」

彼「……」

俺「あっ…wもしかして止めて欲しい?謝るって言うなら止めてあげても…」

ガシっ…

首筋になにやら嫌ーな感覚がする


ああ、なるほど

もう片方の手でやってきたのね

理解理解


彼「…死ね☆」

俺「ちょっやめ、gあああdのfじゃおぎあjふぁjぽfじゃpgふぁjpふぁおのぁ」

そのまま押し倒され、背中に手が侵入し…

最早日本語でもない意味不明な言語を叫んでいた


彼「年下の癖に生意気」


…思えばこれが悪夢の始まりだったんだな

その後、好き放題に倍倍倍返しにされた俺は

顔を手で塞ぎ、しょんぼりとしていた

え?好き放題って具体的に何かって?

そりゃまあ好き放題しか言いようがありませんな


俺「怒ってる?」

彼「怒ってる。もの凄く」

俺「…チョーシに乗ってすいません」

彼「そうだね。調子に乗ってたよね」

俺「…許して」

彼「駄目」


そして話は冒頭へと戻る


俺「ごめん」

彼「駄目」

俺「ごめんなさい」

彼「駄目」

俺「ゆるしてください」

彼「駄目」

俺「どうしたら許してくれる?」

彼「私、帰っていいかな?」

俺「…へ?」

彼「喫茶店でお昼食べて1時で帰っても良いよね?」

俺「マジか…」

彼「うん、マジ」

俺「俺が悪かった。ごめん」

彼「駄目」

俺「…本当、ごめん」

彼「駄目」

俺「ごめんなさい」

彼「駄目」

俺「許して…」

彼「駄目!!絶対に許さない」


結局…許してもらうまで約30分以上も掛かってしまった

なんでこの人、こんなに怒ってるんだよ


彼「もう良いよ。仕方ないから許してあげる」

俺「ごめんなさい。もうしません」

彼「あんたが私に勝てるはずないでしょ?」

俺「……うん」

彼「自分が楽しくても相手は嫌な事かもしれないの。
これがDVに発展していくんだからね?OK?」


もう疲れた

帰ろうとしたから、それを必死に止めたり

その後、何度も言葉攻めされたりだの…

途中からこいつのペースにいつの間にか飲まれていた。


彼「そろそろ良い時間だね、お昼食べに行こうか」

俺「……ああ」




前編終わり 後編に続く