幸せか不幸せか

なつみかん。

私は誰かを羨んでばかりいる、それしか出来ない

私が恋した「人」でした。...2

自作小説

「あーめ あーめ ふーれ ふーれ かーあさんがー・・・♪」

昔何処かで聞いたフレーズを口ずさみながら、たんたんとリズム良く歩いて行く。
紺色のセーラー服の長いスカートには、雨で濡れた染みがぱらばらと広がっていた。

やがて近くの公園までたどり着くと、もう今日はサボってしまおうかなぁ、という邪念が私の行く手を阻んだ。
羽弥の中の悪魔が「1日だけならさ?」と囁きかけて、羽弥もそれに負けてしまったようだ。

平日なので人はいなかった。それにしても、公園といっても雨なのでやることがない。遊具はどれも雨でぐしょ濡れだった。私は、近くの屋根のついたベンチに腰掛けて、空を見上げた。
今日は小雨なのであまり雲がなくて、屋根と木の間からはほんの少しだけ青空が覗いていた。

空に見とれていると、後ろの茂みからガサ、と音がした。

「?!」

咄嗟に振り返るとそこには綺麗な男の子が大きい木の下に座っていた。
本当に、美少年という言葉がピッタリなくらいに、その姿はとても美しかった。
私は引き寄せられるように、彼の頬にそっと触れた。

その時彼は目を覚ました。
こちらに目を向けられると私がやっていることが恥ずかしくなって、青白い彼とは相対に私のほっぺが紅色に染まる。

「.....君の、名前は?」
「柚南木.....羽弥。羽弥って言うの。あ、...あなたは?此処で何をしていたの...?」

心配そうに顔を覗き込むと、いきなり腕を引かれて、私は彼の腕に包み込まれた。
いきなりのことに心臓が追いつかない。バクバクと心臓の音が刻まれて行く。

「ハヤ.....羽弥。......素敵な名前だ。僕を助けてくれたのか、ありがとう。」

低く良く通った声がとても近くで響く。
顔を上げると、彼はこちらを見てにこり、と微笑んだ。
その穏やかな笑顔に、私も笑顔になった。質問の返事などもうどうでもよかった。

いつの間に雨は上がっていた。

木から落ちてくる雫に、2人の笑顔がキラキラと映しだされていた。