永遠に貴方様と
(はじめまして!私を作ってくれてありがとう!)
言葉は届いていなかった。
首を少しだけ回すと博士は疲れ切った顔で微笑んでいた。
「よし、できた。これから私と一緒に暮らしてくれるロボット、さあこれからは楽になるぞ」
(私は博士と一緒に暮らすんだ!)
「お前の名前は...そうだなぁ、ロト。お前の名前はロトだ、今日からよろしく、ロト」
ニカリと笑ったその笑顔は、幼い少年のようでとても素敵だった。
私は油の染み渡らないぎこちない笑顔を向けて、「よろ、し、く、お願い、し、ます。」と、なんとか言葉を紡いだ。
そして、私たちの幸せな日々が始まった。
私は暮らす中で、料理や掃除、洗濯などをした。
博士は最終プロジェクトというものを作っていた。
時々休みに一緒に散歩したりなんてこともした。
月日は川のように流れて、思い出が溢れていった。
その中で私は博士に淡い恋心を抱いていた。
けれと、幸せな日は一瞬にして崩れていった。
私が生まれてから5年は経っただろうか。
博士が体調を崩した。
「博士、プロジェクトよりも今は博士のお身体を大切にしてください。」
「ロト、わかってくれ。私はこの歳だし、そう長くはもたない。一秒でも一瞬でも早く作り上げたいんだ。お願いだ。」
「でも、私は、....博士が辛そうな顔をしてるのが嫌です。」
「ロト。」
顔を上げると、いつもの優しい笑顔で笑っている博士がそこにいた。
「私は大丈夫だ。続けさせてくれるかい?」
私は押し負けてしまった。
博士、そんなプロジェクト、どうして作ろうと思ったの?
私には教えてくれない、秘密のプロジェクト。
あの日から、博士はどんどん衰えていって、命を落とすまでそう時間はかからなかった。
ある日、昼食を作り終えて博士を呼びに行った。
「博士、昼食ができました。」
「......?は、かせ?」
青白い肌、息をしていなかった。
体温はわからない。それでも、死んでしまったんだとわかった。
愛しの人が死ぬ。
涙の一粒も出ない私がもどかしい。
悲痛に染められたその顔は、機械の美しさなどとうに失っていた。歪みきった、人間の汚さ。
(今ならば、プロジェクトを見れるのではないか。)
机の上に散らばった書類に目を通した。
「機械に心を埋め込む。」
そこには私の設計図、そして人の心について詳しく書かれていた。
足が震える。私も命が尽きるようだ。
博士が死んだ今、オイルを入れてくれる人物などいないのだから。
このまま錆びて消えてしまえと
さようなら。もし私に心があったならば。
貴方を永遠に愛していたでしょう。
さようなら。
xxxx年a月b日
森の奥の研究所で異変があったと森の管理人から通報がありました。
小屋の中には老死体と人型のロボットが........
ゴミ捨て場のラジオからは、どこかの御伽話のようなニュースが流れていた。