うみきょんの どこにもあってここにいない

うみきょん

日々のはざまについて、
地上でみた夢の記憶、
地中で見られた眠りのすきま、
絵画や小説、想像世界、花たちなどについて
静かに渡りを記述しています。

心臓の音で安心する

日記

縁者に赤ちゃんが生まれた。
抱かせてもらう。
赤ちゃんを抱いたのははじめて。
わたしは理由があって、そうしたことと無縁にいきてきたから
今になって抱くとは思わなかった。

母になるということは、あらためて、すごいことだなと思う。
だからこそ、それを選ばなかったのだけれど。
わたしは、そうしたことを選ばないかわりに
書いていきてゆくことを選んだから。

だから、家庭とかに対して、どこかひけめがあった。
もっとも、まわりに、そうしたひとがいるわけではないから
(女友達は皆無にひとしかったし、独身でも家庭があるひとでも
そうしたことはあまり関係ない世界で、他者と接してきたから)
ほとんどかんじたことなかったけれど。

赤ちゃんを抱かせてもらったことで、すこしだけ
なにかと和解ができたような気がした。
ありがたかった。

ところで、肌にふれると、親しみや愛情がわく。
ひどい場面で、だが、女は抱いてしまえば、その男のことが好きになる
といった、ことばをきいたことがある。
もっともだと思ったが、
それは男女間に限らず、ああやってふれることで、なにか親愛の情
みたいなものが、うまれる、そのこととどこかで共通するのではと
ふと思った。

抱くと心臓の音がするから、安心するらしい、と
その新しくお母さんになった人はいった。