幸せか不幸せか

なつみかん。

私は誰かを羨んでばかりいる、それしか出来ない

変わらないまま

自作小説

私の家の近くには小さな神社が1つだけ建っている。春になると桜がとてもきれいなところだ。夏には濃い緑の葉がたくさん生い茂るし、秋になると空も地面も茶色く染まる。

その神社で幼いからよく夢を見た。

軽い夢遊状態のようにただ意思も持たずにふらふらとしていると、そこには6才くらいの小さな少女がいた。
「あなたは誰?」
そう尋ねると
「遊ぼうよ」
と、少しだけ笑いを含んだ返事が返ってくる。
その綺麗な容姿と透き通る声に私は決まって恋をするのだ。
二つ、返事を返すと必ずかくれんぼをすることになる。それは絶対に見つけられないかくれんぼで、神社を隈なく探してもどこにもいない。
とうとう暗くなってきて、一人ぼっちになって泣いていると―――


そこで意識が戻る。

目をそっと開けると私は石の階段に横たわっていて、起き上がると星に囲まれた空はオレンジ色の光で包まれている。
いつもその時だけ記憶が曖昧なのだ。
後でよくよく考えてみると、夢の一つ一つがはっきりとしてきて、現実なんじゃないかって錯覚だって起こってしまう。
さらに考えてみると、家の近くだからってそこの神社は自分の意思では一切入ったことはない。

夏の夕暮れ、ふとそんなことを思い出していた。

その夢はどれくらい見ていただろう。

手元の清涼飲料がやけに冷たく感じた。
わずかな日差しに当たって、やけに明るい窓枠から見えるその景色からは蝉が鳴き喚いている雑音が異常なほど静まり返った教室にラジオのノイズのように響いていた。

「・・・いかなきゃ」

意識も朦朧としたままで、あの神社に走った。
何かにとり憑かれたかのようにわき目も振らずに、ひたすらに走っていた。
好きなあの子に呼び止められようが、大親友が話しかけてこようが、立ち止まることをしなかった。

やがて神社に着いた。日も落ちて、空は紺色に近づいていた。

「遊ぼうよ」

我に返ると、そこには美しい、6才くらいの少女が立っていた。
その声はとても透き通っていて、思わず惚れてしまいそうになる。

「何して遊ぶ?」
なんて聞いてみると、「お話しようよ」と帰ってきた。

祠の前にかがんで、内緒話をするようにこそこそと話す。
少女は終始笑顔でいた。

やがて少女は時間だと言った。

私は家まで送るよと言った。

そこで記憶は途切れた。


『ここで緊急ニュースです。△☆県○□町の零怪神社にて女子高校生の遺体が発見されました。警察によると少女の指紋はサンプルのどの物にも該当せず、神社を封鎖しての捜査を行っています。女子高生の首は刃物のようなもので切断されていて、遺体の隣に置かれていた模様です。』

男のうめき声とともに報道は途切れた。

  • 白鷺

    白鷺

    2014/08/02 02:28:26

    ほおほお…謎めいたお話ですねえ…
    いつものと違ってて面白い!次回作も期待してますよ先生