届かず
(このまま崩れてしまいそうだ)
彼女はとても脆かった。
まるで精巧に作られた人形みたいなその綺麗な顔立ちと力なく垂れ手足からは少しだけマリオネットを想像した。
胸からしたしたと流れる液体は止む気配もなく今も流れ続けている。
白いセーラー服はみるみるうちに赤く染まっていって、日常とかけ離れた異物を目撃したような気分になった。
これだけの血を見ても何故吐き気がしないのかが不思議だ。
青みを帯びていく肌は透けるように綺麗。
私はもう動かない彼女の長いまつ毛をただ見つめていた。長く伸ばされた自分の髪の毛が鬱陶しくて、何度も耳にかけながら。
愛おしい彼女の瞼にキスをした。
最後まで伝えられなかった言葉は胸の奥底に閉じ込めてしまおう。
(私はあなたを愛していました。)
「おやすみなさい。」