王ちゃん

高倉健の最期の手記

日記

原稿は亡くなる四日前の日付だったという。
「諸行無常」と題して、終戦から手記を書いているその時までの、身の上の変化と
意識の変化を、淡々と記している。そこに健さんの変わらぬ一筋の気質が流れていて勉強になった。
    健さんの座右の銘となった「往く道は精進にして、忍びて終わり、悔いなし」の言葉を贈った天台宗の阿闍梨は、出会いの縁を大切にされる人だったそうだ。その縁とは、会おうと思って会えるものでなく、会うべくして会う縁といったもののようだ。
    イエローハットの創業者が、「凡事を非凡に行う」ことの積み重ねの中で、人との出会いが、事業にも、人生にも厚みを増していったと語っていたが、健さんも阿闍梨も、たぶん、目の前の課題に集中して、丁寧に、精魂込めて解を導き出していった縁で、互いの出会に導かれたのだろう。
   私はまだまだ青二才だ。平櫛田中は、60歳台は鼻たれ小僧だと言っていたが、青二才は思い上がりだったようだ。私はまだまだ鼻たれ小僧だ。