昼下がりのペットショップ。
欲しい犬を見飽きたのでついでに他の鳥のブースへ、
そこでご年配のご婦人の話し声に耳を止めた。
通路側のその人は藤色のカーディガンを手に持ち、
連れのご婦人と静かな口調で話していた。
私は話の内容に興味を惹かれて耳を澄ませた。

私の田舎に面白い習慣があってね、
婚礼箪笥の引き出しに小鳥の卵をひとつ入れておくの。
針で穴をあけて中身はぬいてある、
親指の爪くらいの小さな卵。
それをつぶさないように小箱に入れて、
採ってくる人がいてねそれを買うのょ。
何の鳥の卵だか忘れたけど小鳥には気の毒だけど、
子宝に恵まれるようにって縁起をかっぐために。
私が結婚するころには野鳥の卵を採るのはいけないことになって、
ウズラの卵を入れたの。
でもね、
子供のころ近所のお嫁さんの箪笥の中で見たのは、
そんな卵じゃなかった、
もっと小さくて翡翠の珠みたいな素晴らしい色合いだった。
あれはねぇ、
何の卵だったのかしら ? 。
　
私はもっと聞いていたかったのだけれど、
用事を済ませた友達が迎えに来てしまい、
その話は最後まで聞くことはできなかった。