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陰陽師★瀬織津

自分の好きを表現し、具現化するところ

使鬼神(しきじん)

グルメ

『四国偏礼霊場記(寂本(じゃくほん)原著)』原本現代訳<105> 教育社新書 村上護訳

『四国偏礼霊場記 巻一 讃州上』の善通寺の項に、安倍晴明の逸話が出てくる。

 本文中では安氏清明(あんしせいめい;安氏は安倍家のこと)

いわく 陰陽の博士晴明が讃岐国に下向のおり、夜道を行くので連れていた使鬼神(しきじん;式神)に松明で火を灯させたのだが、途中、善通寺の近くを通った時に使鬼神が姿を消してしまった。寺を過ぎると再び使鬼神が現れ、火を灯したが晴明が問いただす。すると式神は、この寺の額は四天王が守っているので怖れをなして道を変えたと申した。

 しかしながらこの訳者(村上護)や出版社は式神や陰陽道のことをご存知なかったのであろう。「供の者が鬼神火を灯したが…」と文意が不明な訳をされている。

 この話の面白いところは、善通寺の扁額(南大門の額)が実は弘法大師が揮毫したので、四天王が守護するという霊威に式神が思わず避けてしまった、陰陽道vs真言密教の呪術戦のような内容になっているのだ。『四国偏礼霊場記』が編まれた江戸時代前期は、晴明が陰陽師という呪術者で式神を使っていたことは世間一般の常識だったことだろう。

それにしても「使鬼神」という漢字の使い方は、言い得て妙である。式神よりも意味深長と言おうか。いかにもそれっぽい!

 ちなみに式神が戻ってきて火が再び点いたので付近の山が「火上山(かじょうさん・ひあげやま)」という地名起源説話にもなっている。もちろんこの山名も火上山も在地に現存する。反対に火が消えた(暗くなった)場所が「火除山(ひよけやま)」という。こちらは小さな岡のようで、私は場所を特定できず、調査中で取材には行っていない。

おっと、讃岐(香川)の善通寺は誕生院とも言われ、弘法大師が出生し幼年時代を過ごしていた寺という注釈も必要か?!