小人閑居して不善を成してやろうじゃないか

Joe

このつまらない俺に暇を与えてごらんなさいw

ありふれた日々 #3

自作小説

執務室に戻った桃子が見たのはノロノロとラジオ体操をする同僚たちの姿。
誰に強制されるでもないのに殊勝な心がけだ。
ふと目に飛び込んできたのは若いのにかなり頭の風通しのよくなった男性社員の後ろ姿だ、身長も157cmの私よりも少し高いだけだし決してイケメンでもない。
ただ彼のラジオ体操はどこかしらキレが良くスポーツマンであることは確かなようだ。会社の中でも稀有な存在のその男は桃子の業務フォローをしている横山文一郎だ。
「おはよー」 横を黙って通り過ぎようとしたときにさりげなく挨拶を飛ばしてきた。少し罰が悪かったが「おはようございます・・」と喉の奥から何とか絞り出して席についた。ちらっと彼の様子を伺って見たが何も気にしている様子もない。営業課長も務める彼にとっては私の業務フォローなど本来の業務外の厄介なものに違い無いはずなのに一日の大半を費やしている。調子の悪い私は定時には帰るが彼はその後に責任ある営業課長の仕事をしているのだろう。さらにあの体操のキレとさわやかな挨拶・・・なんだか笑えてきた。管理職ともなると残業代もないであろうに会社に身を捧げて馬鹿な男だ、いや男はみんな馬鹿なものだ、あんな男のフォローなんて本当は必要ない。うまくいかないのはちょっとうまくかみ合ってないだけでそんなのすぐにうまくいくようになる。私は上司や周りに媚を売らないから仕事がやりにくいだけですぐに実力でわからせてやる。

桃子は前日帰宅後に大量に送り付けられたであろうメールを流し見しながらそんなことを考えていた。
 一通通信販売の担当者から気になるメールが入っていた。