こはる

心は

小説/詩

夕暮れ時 薄暗く曇っていくその時に
かなかなかなと響く ひぐらしの声
その声は もの悲しくも切なく響いている

けだるいような空気の中に
時より 入り混じって吹く秋の涼やかな風
空を見上げると
いわし雲が浮かんでいる

私は聞いてみる
空を吹く風の音を
浜に寄せる海の響きを
草がさらさらとささやくその声を

私は眺めてみる
いつの間にかのぼった月は
長く静かな光りを投げかけている
あの山の あの谷の あの木の上に
変わらぬ揺れうごく海原の上に

私の心は 体は
時に 燃えている松明のように細くなり
悲しい心を抱きながら
深い海のほとりを歩く
身をかがめて

私は
いったいどこへ行ってしまったの
飛び去ってしまったの

私は心に聞いてみる
そして思いを凝らしてみる
夏の微笑みを
浜辺に咲く花のささやきを
にがい海風や 岩に打ちつける波のうめきを

静かに聞いてみる
自然の声を
私の心の声を