金木犀

顔があるか

小説/詩

彼には顔が無い

そんな彼の声を聴く

乾いた声で話が進む

彼の目を見る

空虚な世界が映り込む

彼の気持ちを考える

渦巻く感情が溢れ出すのを硬い扉が閉じ込める

彼の顔が私にむけられる

変わらない当たり前の顔

当然のようにそこにいる彼

それでいて影のように溶け込む

だけど彼はそこにいない

嘘とはなんだったか

あなたには顔が無い