午后1時、
なんとも古めかしいクーペが玄関に横付けされた。
今ではほとんど見かけない117クーペである、
悪友が父から譲り受けた車で今でも乗り続けている。
かれこれ４０年前位にはなるのだろうかこの車、
デザイナーはかの有名なジウジアローである。
私もこの車は好きだ、
今の車にはないわびさびみたいなものがある。
スクランブル交差点を右に回り、
駅を背にして真っ直ぐに走っていく。
悪友は窓を開けて煙草を口に運んだ、
「あれ、煙草なんて吸ってた?」私は聞いた。
「ほれ、ハッカなのね～」それを一本私にくれた。
二人で窓を開けてハッカをくゆらせた。
「今日もお洒落だね」悪友はこの車に乗るときの儀式として、
丸い縁の鼈甲の眼鏡をかけ、
ハリス・ツイードのスーッを着てボゥタイしてる。
この車に乗るとなぜか二人は微笑んでる。