金木犀

拳銃

小説/詩

それは大きな音から始まった

その音は一瞬だった
音はその一瞬で空気を支配してみせた

倒れていくその姿はゆっくりと見えた
しかし頭の中では一瞬で何度も見ることが出来た

思い出すその瞬間は無音の世界になる
大きな音は覚えている
その音をはっきりと表すことが出来ない

倒れたまま動かない姿に私の体は感覚を忘れた
倒れた姿の変化から目を離せないまま
頭の中ではさっきの出来事が何度も流れる

声が聞こえる気がする
足音が聞こえる気がする
誰かが倒れた体を抱き起している
見えるものの中で一番はっきりと映る赤が大きくなっていく

私も何かしないといけない
何を?
何も思いつかない

支配された空気の中で
私もまた支配されていた