On The Road
少し前に、少しだけビートニクブームの様なのがあって、一部でもてはやされたジャック・ケルアックのOn The Road(邦題:路上)。
子供の頃から本は好きでしたが(教科書が年度初頭に配られると、その日のうちに国語の教科書を全部読んでしまうタイプ)、それでも10代の頃にこれほど衝撃を受けた本はなかったかも知れません。
翻訳権は河出が持っていて、2000年代になってから新訳が出ましたが、実は新訳は私は読んでいません。ハードカバーで出た時には、居ても経ってもいられず買ったのですが、自分の中で何かが壊れてしまう様な気がして、表紙を開けませんでした。きっと今時な表現に改められた訳になっているのだろうとは思います。
でも、私にとってのOn The Road、というか「路上」は、1959年の福田実訳なのです。
たしかに言葉遣いなど、ああ古い翻訳だなと思います。でもその古いガサガサした手触りが、この小説の空気感というか温度感というか、そういうものをとても鮮明にしていました。
タイトルも新訳は原題通りに「オン・ザ・ロード」となりました。正直、なんて無粋なことをしたのかと思います。On The Roadという秀逸な原題、そして「路上」という、これしかない、というほど素晴らしい邦題をすてて、よりによって片仮名で「オン・ザ・ロード」。
そして、サリンジャーの本かと思う様な、色鉛筆で描かれた爽やかな装丁。これもどうなのでしょうか(ハードカバー版は、まあ悪くありませんでしたけどね)。
59年版の装丁は、全部で3種類。おそらく、初版と2つめの装丁が好きな方は、きっと私の好きな3番目、最後の装丁を嫌いだと言うのかもしれません。それは、当時人気のあった鈴木英人のイラストでした。FMファンの表紙のイラストの人、と言えば、若くない人には分かるでしょうかw
流行りのイラストレーターを使った下世話な装丁といえば、そうかもしれません。しかし、鈴木英人のイラストは、「湘南」という言葉がキラキラと輝いていて、まだ日本にアメリカという国に対する、幻想ともいえるような憧れが残っていた最後の時代を体現する、そんなものだったと考えています。あの原色バリバリの脂っこくも軽いノリが、爽やかに、どこか寂しく退廃するOn The Roadと、私の中で分かちがたくつながっています。
私にとって、アメリカというパワフルで、自由で、そして浅い歴史の中にあらゆるものを詰め込んだ歪みから逃げられなかった国の原風景は、この一冊に尽きるのです。
この本は、「良く分からない」と言われると、おそらくその時点で説明不能と言うか、説明する意味自体が失われるようなタイプの本ですが、機会があればどうぞ。
ピンクりんご
2015/11/30 13:31:12
もえーんさんがオススメならチェックせのばなぁ.....〆(・ω・)メモメモ