ユースケ

好きな5冊(ダメ人間のための書)

小説/詩


1、論理哲学論考 (ヴィトゲンシュタイン)

代表的なダメ人間製造本。インチキなディレクトリ構造が素敵である。
思索するため読むのではなく、好き勝手に解釈できる一節を探すのが目的。
末尾の一行は誠にバカ向けである。思考放棄を弁護してくれる至高の一冊。

2、なしくずしの死 (セリーヌ)

これも必読。崇高な人類の不断の努力をコケにするのに最適だ。
この書を人類愛と称して憚らない著者の壊れ方に心酔し、溺れて浮かび上がれなくなる。
これを真実の書と誤解できれば、貴方もこちら側の人になれます。

3、泥棒日記 (ジャン・ジュネ)

『花のノートルダム』よりもこっちのほうが若干ドライで好き。
ジュネを文明人と評した人がいる。うむ、文化人でなく文明人というのは納得。
この本を何度も読むと、ヒトラーやスターリンが立派に見えてくる。

4、黒い本 (ロレンス・ダレル)

ヘンリー・ミラーは苦手なのだが、ダレルは何故か性に合う。
非常に美文調の散文詩の体裁でグジグジグジグジとまあ、うっとうしい。
腐敗、とは官民癒着ではなく、この本の如き精神構造を指すために使おう。

5、共産党宣言 (マルクス・エンゲルス)

これも大変便利な本ですな。プロレタリアの枠組に全力で逃避できる。
幻想の構造体、実在せぬ同志との実体無き連帯感に身を任せるのです。
もちろんインターナショナルを愛唱歌にする。でもブルジョアへの憧憬を捨てず。

付言しますと、この5冊を読むとダメ人間になる、と言ってるのではありませぬ。
ダメ人間の自己韜晦と理論武装に適した書物だと思うわけなのです。
すでに十分ダメな方が読むにふさわしき名著。著者各位、許されよ。


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