龍を見るー
ヤスヒコはとつとつと語る
「声が自然にでてくるんだ
自分の声じゃないんだってこと
すごくわかる」
「それは誰かってことわかるの?」
「やりかたは教えてもらった」
「教えて!わたしもやってみたい!」
「次に会ったときでいい?
もう少し復習してみたいんだ
そしたらいっしょに練習しよう
あのさ、セミナーで知り合った人がね
女の人なんだけど
宇宙にいく瞑想旅行セミナーをしているんだ
いっしょに行ってみない?」
わたしは強く首をふった
「うんうん、おもしろそう~行くよ~」
マスミのマンションの部屋はペントハウスだった
屋上階のエレベーターのドアが開くとマスミが迎えてくれた
「いらっしゃい どうぞこちらです
一度屋上に出るから皆さん迷ってしまうのよ」
ヤスヒコの後について屋上にある部屋のドアを開ける
ソファーと小さなテーブル以外
飾る花もないが
とてもきれいにかたづけられているあったかみのある空間だ
瞑想旅行はすぐに始まった
迎えにきた宇宙船に乗ると
星間旅行だ
なんてクリアなイメージだろう
ハイビジョンテレビを観ているような
クリアなイメージだ
ガイドするマスミの声が2次元の視野を
3次元へと誘う
ーあなたはどこにいる?-
「わたしは・・・まだ宇宙船のなか・・・」
ー窓の外には何が見える?ー
まど?まどのそと?
「わたし、宙に浮かんでいる!」
ーだいじょうぶ その姿勢のまま 遠くを見てー
とおく?何も見えない
さっきまで星が見えた気がしていたのに
「雲の中 霧のような雲の中だわ」
ーもっとよく見て 雲の中に何かいるでしょう?-
わたしはちょっと頭を後ろに引いて斜めになったまま
雲の海を見た
雲の中に長いひものようなものが何本も波打って動いていた
あれは・・・
ゆっくり息を吸い込む
「そうだわ あれは龍のような動きだわ」
ーヤスヒコ あなたはいつも龍が好きでここにはよくきているわねー
ヤスヒコはとまどった声で語る
「何も見えない 霧の中だ」
ヤスヒコが応えたあとすぐに、わたしの目の前に
いや、実際には目を閉じているから
自分の脳裏にといったほうが正しい
突然、龍が飛び込んできた
うねっている
いつか遭ったことのある龍に似ていた
わたしの喉の中から音がこみ上げてきた
「ごおっ」
それは地響きをたてる小さな竜巻のように
からだをふるわせて通り過ぎていった
帰りの電車のなかでもまだ
からだのなかを通り過ぎて行った振動が残っていた
「ねえ、ヤスヒコ、あれは龍の声だったのかしら?」
「ぼくは龍が好きで龍を見たくなるとあそこへ行くんだけど
見るだけで声を聞いたことがないんだ
でも、龍の声だと思った」
「家に帰ったらもう一度 やってみる」
マスミに龍へと誘導されたわけではなかったし
自分で声を出そうと思ったわけでもなかった
お腹の中から柔らかなお餅のような塊が
食道を拡げながらあがってきて音化したのだ
あれは龍の声だとわかってはいた
わかってはいたが、自分以外の誰かに同意してほしかった
向かいの席で母親の膝に座っている子どもが
じっとこちらを見ている
『上井草~ 次は上井草です』
次に停車する駅のアナウンスが始まると
母親は電車のドアへと歩いていく
抱かれている子どもはこちらから目を離さない
何をそんなに熱心に見ているんだろ?
子どもの視線を追いながら
右へ頭を回すと右目の端に見たこともないような銀白の色が見えた
もっとよく見ようと車窓へ顔を振りむくと
窓の中に
さっきの龍の鱗が映っていた
アヴィ
2016/01/23 13:46:37
龍の改装に誘われて読ませて頂きました。
ありがとうございました。
私は、いわゆるランナーズハイで金色の龍を見ました。w
あん*✿
2016/01/15 06:38:00
夢のあるお話 ありがとう~
Хани
2016/01/14 23:13:01
きゃー(ノ´∀`*)
素敵
龍が見えたりとか憧れちゃう
(せいぜい雲を無理矢理見立てるぐらい…( 〃´艸`)
番外編として
DRAGON indexに掲載してもよろしいですか~??
お返事お待ちしております^^
☆シエ☆
2016/01/14 23:05:38
上手だね~
龍を見るなんてそして結末がイイですね(^^♪
私の龍はダメだねw
瞑想旅行行きたいな~
るう
2016/01/14 12:47:01
こんにちは。トシraudさんの紹介で読みにまいりました。
近未来にこのような瞑想旅行が出来るかもしれませんね^^
出来るなら私も龍を見に行きたいと思いました^^
トシraud
2016/01/14 08:16:58
竜の改装が流行っていますが、大潮さんが竜のお話を書いてくれたw
西武電車と併走するように飛んでいく竜!!!(ライオンズもあやかってくれよな。。。プンプン)