日銀の猫だまし。
　当座預金の追加分はマイナス金利にするという。あまり効果が期待できないのに突然に政策決定したものだから、相撲の立ち合いの猫だまし作戦のようにマスコミや証券市場がびっくりした。為替相場も大きく上下して、つられるように株価が大幅な値動きを示した。この騒動で甘利大臣の収賄事件や大臣の辞任に伴う政治的混乱を一気に吹き飛ばしてしまった。金融政策の猫だましだけでなく、政治情勢の猫だましにも成功したようである。何も変わらずに平成の元禄時代は過ぎていく。

　ところで、マイナス金利とは、噛み砕いて言えば、こんな現象である。銀行や郵便局にお金を預けると、０．０１％の金利が付くとする。こんな金利はあってもなかっても同じことだが、安くても利息がついてくる。ところが、マイナス金利になれば、個人が金融機関にお金を預けると保管料を取られるという意味である。現状はここまで極端になっていないが、日本銀行と市中銀行との取引において、日銀が銀行から余分な資金を預かれば、保管料をもらいますよ、と宣言したのである。つまり、銀行が抱えている余分な資金は日銀に預けるのではなく、企業の設備投資や個人の住宅融資に回しなさいという政策である。

　保管料を取られるのなら円を売って、アメリカのドルを買って、アメリカの銀行に資金を預けたり、債券や株式を買った方が利息も付くし、資金運用が有利になると判断されるのは当然のことである。日本の市場は満杯だから、つまり安い商品が溢れているから、国内に投資する妙味が薄らいできている。だぶついた資金は海外に流れていくだろう。けっして日本の景気の刺激策にならない。

　余っているが、枯渇状態なのである。潤っている筈なのに喉が渇いているというのが日本の現状なのである。中国も韓国も生産設備が有り余っている。どこもかしこも過剰なのである。これ以上食べられないのに空腹感が存在する。論理矛盾の時代に突入している。誰か、どこかの国が倒れるかもしれない。この恐怖がある。