脳活『為ブログ』458-1
逆立ちして考え直す。
考え方に行き詰まることがあると、同じ回路で思考を巡らすのではなく、思い切って逆さまに考えてみる。例えば、推理小説の主人公の動機を何にしようか、はっきりと見えてこない時には、加害者の動機ではなく、被害者の立場になって考えてみると、加害者の動機が明確になってくことがある。
私が友人の弁護士事務所を訪ねたことがあった。彼は大きな弁護士事務所で5年ほど修行してから、自分で独立した事務所を構えたが、資金がないのか旧いビルの4階であった。このビルにはエレベーターがない。しかも、階段が螺旋状になっているために四階まで上がると、私は車に酔ったように気分がおかしくなった。家賃が安いからと言って、これはちょっと厳しいと思った。
事務所の開設祝いに近くで買った花を持参したが、花を生ける花瓶が見当たらない。私が迷っていると、じゃ、ここに置いてくれと、彼は部屋の隅にある炊事場の流しにペットボトルをカッターナイフで器用に切って、水を入れ、花束を差し込んだ。部屋には一つの事務机と椅子が2脚あるだけで、室内はガランとしている。
3日前に移って来ただけだから、何も備品は揃えていないと友人は言った。それに必要な法律関係の書類も、前の事務所に置いてある。まさか、こんなに早く君が訪ねて来るとは思ってもいなかった。一呼吸置いて、友人は言った。
「さっき、得意先の社長に呼び出されて、行かないといけない。1時間ほどで帰ってくる。すまないが留守番をしてくれない。コーヒーを出前しておくから。」
こう言うと、友人は階段を駆け下りた。(つづく)
アメショ
2016/05/16 15:36:37
はい。