脳活日誌596号
勘違い、思い過ごし。
記憶とのすり合わせミス。脳の思考は記憶との照合で成り立っている。思っていた情景と違っていると違和感を感じるのが、この証拠である。目の前の事柄に対処する時に過去の経験から得た知識で対応していく。職場での仕事は概ね想定内の事柄が多い。経験を積めば、どんな事柄であっても思考ゼロでデッドロックに乗り上げることはない。乗り上げたとしても、解決の糸口は見いだせる筈である。
このデッドロック(deadlock)という言葉は、辞書によるとlockをrockと間違えたところから暗礁に乗り上げる、交渉などの行き詰まりを意味するようになったと説明してある(スーパー大辞林より)。勘違いや思い過ごしは、記憶の蘇生ミスに由来している。役立てる知識は蓄積された過去の知識とのやり取りで均衡を保っている。この両者がずれるといろんな不具合が生じてくる。
いわゆる想定外の出来事は、最初のボタンの掛け違いにある。始めにミスがあったに拘わらず、見てみないように事態をより複雑してしまう。根本を問題視するということは組織の中では大変なエネルギーが要る。ちゃぶ台をひっくり返すようなことはなかなかできない。崩れかかった壁に上塗りをして糊塗してきた経緯がある以上、剝がし取ることは至難の技である。
ミスは勘違いから生まれる。過剰な期待と願望から思い過ごしが生じる。こうした場合には素直に謝ることである。個人は簡単に謝れるが、組織は簡単には謝罪できない。この組織という擬人格が厄介なのである。日本はこの厄介な渦の中にある。