ありふれた日々 #21
<作者からのメッセージ>
ここのところ忙しくなかなか更新できません。物語を楽しみにしてくださる方のためにいったん書きかけだった現行ですが推敲せずに掲載します。
#21(仮)
3日後、藤原は横山と共に開発メンバーから遅延回復案の説明を受けた。打ち合わせ前にはメンバーが横山に何やら深々と頭を下げていたのは気になったが何か協力してやったのだろう。相変わらず面倒見のいいやつだ。その場での報告はかなりしっかりしていたものだったというよりも遅延箇所は報告の時点で解消されていたのだ。 ちらっと横山を見たが満足そうにうなづきながら軽い質問をいくつか飛ばしていただけで淡々とPMOの仕事をこなしていた。
定期的に行われるプロジェクトのトップ(経営陣)報告会でも進捗の順調さも手伝い始終和やかなムードで時には経営陣からアイディアが飛び出しても来た。藤原も以前の針の筵から解放され、経営陣とのやり取りにも慣れてきた。唯一プロジェクトのとん挫を期待居ていた営業本部長もここのところ一転してプロジェクトを称賛する言葉を並べ立ててくる。自分にはわからないが何か大きなベクトルがそろったような気がする。大体物事がうまくいかないときは些細な誤解や祖語が解消されないことに起因しているものだ。それを自分の横にすわって笑顔で経営陣とやり取りしているこの男が担っているであろうことも気づかない程馬鹿ではない。ただ、その活躍はプロジェクトの報告書にもプレゼン資料にもどこにも載ってはいない。
その後、プロジェクトは5年計画の目標をわずか3年で成し遂げ5年目で通信販売は80億円を売り上げる事業として経営の柱の一つとなった。その間いくつもの困難に出くわしたが翌日には解決している。 プロジェクトに参画することは社員としてのステータスとなっていき。藤原とプロジェクトを企画したメンバーは横山を除きその功績を認められ1段階昇進した。
一方一番の功労者であることが明確なはずの横山は依然元の部署であったがその後、本人の希望もあり営業本部への異動となった。それほどの大偉業をプロデュースしておきながら全く横山が評価されない事に納得がいかない藤原は社長に訪ねてみたが「それが彼の希望なんだろう」としか聞かされなかった。
役職は課長だが現在のすべての部長以上は彼を呼び捨てにするものは居ない。そして困ったときに頼るのも彼をおいていない。そういえば今は大田桃子って子が通販の需給をしているんだったな。
「誤解とはいえ詫びをいれとくかぁ」 藤原は小さくつぶやいて受話器を取った。
横山のやつ、どうせ今も好き勝手におせっかいを焼いているのだろう。そしてこれからも。
「ありふれた日々」 終わり