フリージア

金狼の重圧 『エデン編』第2部…9

自作小説

エデンは気迫に押されていた。この異様に気迫を出す男は一体誰なんだ?過去にEMでレースをしてた男なのか?ウルフと同じコードネームで呼ばれていた男なのかもしれない。
素直な言葉でこの場を切り抜けよう、そうエデンは考えた。
「…ウルフのこと知っているなら、もちろん教えてほしいのですが…」
「あんたはウルフを探してるってことだな?そのためのゴールド仕様ってことなんだな?」
「そうです、それがこれに乗っている理由です」
そう言うと金色のEMをなでる。EMに触るとなぜが勇気が湧いてくる、エデンはいつもそう感じていた。先ほどまでの気迫に押されっぱなしのエデンから脱却し、胸を張り強い眼光を放った。

「探して…どうするんだ?」
「もちろんレースを…」
レースの言葉を発するやすぐに細身の男は遮った。それも口調は荒かった。
「今さら!…今さら、ウルフと対戦してどうなるんだ?数年前ならいざ知らず、今はウルフの伝説も薄れ知っている奴も少ない。そんなウルフと対戦するよりも、今走っている奴らとやった方がよっぽど価値があると思うがな…」
この人はウルフが走っていた同じ時期に走っている、もしくはウルフと対戦している男に違いないとエデンは思う。そしてウルフが復活していることを知っている。
「僕は、ウルフとなんとしてもレースをしたいんです。それは復讐なんです、ウルフへの…」
「復讐?」
「はい、詳しくは言えませんが僕の復讐です」
レースへ誘う過程は問題ではない、復讐と言う嫌な印象でもきっかけが欲しかった。しかし…
細身の男は近くの壁にあったスイッチで作業スペースの明かりを消した。
「復讐なんて言っているようじゃ、ウルフには勝てない」
文字に連ねたら強烈に厳しい言葉だ、しかし音は包み込むように優しかった。
優しいだけに心に響く。
男の目は帰れと言っていた。どうしてダメなんだ?自分の事情も知らずになんでそんな簡単に結論を言うんだ?エデンはそう口から出かかったが飲み込んだ。
今この男と口論しても始まらない。ただここが求めていたウルフへのヒント、失うわけにはいかない。
納得はできなかったがこればかりは仕方がないと思いエデンは整備屋を後にする。収穫は多い方がいいが、焦ってはいけないのだ。
「また来ます」
その言葉に意外な答えが返ってきた。
「ああ、また来いよ」
もう来るな、そう言われると予想していたエデンはあっけにとられたが頷いてEMにまたがる。モーターを始動させ颯爽と走って行ったエデン、それをずっと目で追いかけてた細身の男。
その男はかつてウルフと対戦したこともあるコードネーム『バタフライ』…その人であった。

  • ミチクサ

    ミチクサ

    2016/10/23 23:15:40

    ウルフ絡みの人物が揃い始めると
    ウルフ本人がどうなっているのか
    とても気になります^^v