セカンド

とおの物語り その8 倉建てた

小説/詩

むかしむかしある村に大金持ちがいました
倉の中には千両箱が3つもあるとのうわさがありました

さて
その家には二つの言い伝えがありました

一つは
裏庭に宝物を埋めてあるというもの

もう一つは
困ったとき以外掘り起こしてはいけないというものだ

埋めた場所を書いた地図は
仏壇の引き出しの桐の箱に入っているという事です

さて七代目の家の主で長衛門がいました
とても欲深い人でした

長衛門はこの言い伝えが
気になって仕方ありません

我慢が出来ずにある日とうとう
仏壇の桐の箱を開け庭を掘り起こしました

しかし
何もでできませんでした

腹を立てた長衛門は仏壇を蹴っ飛ばし
霧の箱を壊し地図を燃やしてしまいました

あくる朝の事です
旅の僧がふらりと現れました

「この家には宝の箱が埋まっておるようだ」
「ふむふむあのあたりだな」

長衛門の前で呪文を唱えました
そして持っていた杖で「えいっ」

庭の地面を突くと
なんと小判が一枚出てきました

「や、や、や、これは・・・」
長衛門は驚いて腰を抜かしました

きっと名のある高僧に違いない
そう信じて旅の僧を家に泊めもてなしました

しかしいつまでたっても宝の箱の
場所を教えてくれません

そればかりか自分の弟子と言って
何十人もの僧を呼び寄せました

毎夜毎夜、飲めや歌えやの大騒ぎ
これはおかしいと長衛門は思い

「あのぅ~、御坊様、宝の箱はどの当たりに
あるのでしょうか」とたずねます

すると僧は地面を杖で突きます
今度は小判が2枚飛び出てきました

また疑うと今度は3枚
そうこうしているうちに半年が経ちました

杖で出した小判が千枚になった時
長衛門は大喜び

新しい千両箱を取り寄せ
倉に納めることにしました

いよいよ倉を開けて
千両箱を納めます

「よいしょ」と
もともと置いてあった千両箱をずらそうとしてびっくり

簡単に軽く動くではありませんか
驚いた長衛門は千両箱を鍵で開けました

「な、無い!」
千両箱が空っぽでした

あわてて今持ってきた千両箱を
開けてみました

「あわわわわ・・・」
長衛門は腰を抜かしてしまいました

千両箱の中には小石が詰まっていました
あわてて母屋へ戻ると僧の姿はありません

弟子の僧も一人として見当たりません
「なんて事だ」家の前で立ち尽くしていると

「どうなさったのですか」と声がしました
別の旅の僧が立っていました

長衛門が話をすると僧は言いました
「貧乏神じゃよ」

「同じ話を山の向こうの村でも聞いたことがある」
僧は気の毒そうに言いました

「お祓いをして差し上げよう」
僧は慈悲深く言葉をかけました

長衛門はこれ以上小判が減ってはまずいと
僧を倉へ案内しまいた

二つ残った千両箱を前にしたとき
長衛門は眠気に襲われました

目を覚ますと千両箱がひとつもありません
「これはどうしたことだ」

長衛門が憔悴していると声が聞こえました
そこには一人の別の僧が立っていました

「やられたな長衛門よ、別の貧乏神じゃよ
欲が深すぎた罰じゃな」と声がしました

「お前も貧乏神か」
と長衛門は殴りかかりました

と僧は金色に光り
長衛門は弾き飛ばされました

見ると天高くから
金色に輝く姿が舞い降りてきました

「ぼ、菩薩様お許しを」

その瞬間
澄んだ声が響きました

「長衛門、千両箱の一つは貧乏神より
取り戻した

三つあった千両箱はお前の欲で
一つになってしまった

一つは我が慈悲にて与えるが
無くした二つの千両箱を満たすまで働くがよい」

それから50年が経ちました
村の子供が歌っています

「働き者の長衛門
倉三つ建てた

菩薩様に怒られて倉建てた」

なんでも長衛門は改心をして働き
倉の千両箱をさらに5つも増やしたとか・・・

そしてなんと三つ目の倉を立てた時
庭を掘り起こすと宝の壺が一つでてきたそうな




なんて
これもありがちなお話ですけど・・・



























  • セカンド

    セカンド

    2016/10/29 09:01:50

    いしころ様

    最後はめでたしめでたしで終わるのが好きなもので
    ハッピーエンドにすると自分もハッピーになる気がします

    あと二つ書くと「とおの物語」は終了?
    何を書こうかな?

    ポッと浮かんだら書きます
    しばしお待ちを・・・


    夢子様

    色々なお話が総動員してるって感じです
    自分でもそう思います

    キツネは遠野物語でもたびたび登場します
    でもタヌキが出て来ないんですよね

    この両者昔から日本に根付いている
    でもなんで「だまし役、悪役?」になってしまうのでしょうね

    ちょっと暇な時調べてみようかな^^





  • 夢子

    夢子

    2016/10/29 02:02:55

    ふむ、ふむ、おもしろいですね。
    貧乏神が代えた小判が小石になった、というお話はは「たぬき」のしわざかと思いました。
    キツネに化かされる話、タヌキに化かされる話はよく祖父から聞きました。

  • いしころ

    いしころ

    2016/10/27 01:49:37

    よくありそうな物語だけれど セカンドさんの世界観 おもしろぉ~~い!
    最後が めでたしめでたしで終わるのが いいな 寝る前に読むと笑顔になって
    ぐっすり眠れるような気がするもの^^
    むかし話って 面白いよね 必ず良い人と そうでない人がセットになって出てくる
    あ・・今のドラマでもそうか・・善人ばかりじゃ お話が展開していかないかなぁ~
    貧乏神の出番もなくなるし ・・でも そんな善人ばかりの世界で
    優しいお話が展開するといいなって思ってしまうのです
    笑顔一杯でおやすみなさぁ~い(^^)/

  • セカンド

    セカンド

    2016/10/26 01:12:36

    奈柚様

    そうか
    貧しい人たちが貧乏神に心を救われる事も有る

    考え付きませんでしたね

    人や家に取り付いて
    その人や家を貧乏にするのが貧乏神って思っていました

    貧乏神も捨てたものでは無い?

    とおの物語もあと3つ・・・
    ネタは無いかな?

  • 奈柚

    奈柚

    2016/10/26 00:46:05

    いや・・・
    ありがち話でも
    セカンドさんらしいオリジナルを感じますよ

    しかし 詐欺師を貧乏神っていうのはいいですね^^
    私の知ってる貧乏神は
    貧しい人々が生活の苦しみを貧乏神のせいにすることによって
    心を救われる っていうね
    これもまた慈悲なんなーって思いました