【お話】魔法横丁の小さな広場で
ここは、魔法横丁の小さな広場。
通りと通りが交差する、ちょっとした空間。
あちこちで店番をする人たちの姿は、変身薬入りのお茶のせいか、ちょっと不思議。
顔なじみのうさぎの店主は、のんびりと、今日もポーションを練っている。
「店主、依頼にあった、魔法花の蜜と花粉を持ってきたよ」
「ほいほい。依頼料の恋心のスミレと、月光を集めた花はこちらだよ。
ついでに、お茶はどうだい?」
「前にそれ飲んだら、眼の色が赤に変わって、三日ぐらい戻らなかったよ……」
「おや。うさぎに変わる薬を入れたはずなんだけどねえ。じゃあ、代わりにこの飴玉をあげるよ」
からん、ころん。
甘い味のする飴を、口に放り込む。舌先で転がせば、魔法の光がちらりと見えた。
店主の作る飴玉は、お茶と同じく、不思議を起こす。
「あれあれ? 広場に何か見える」
「おや、今年も、魔法の泉が現れた」
さっきまで、何もなかったはずの場所に、
月の光を集めた、泉。
きらきらと、ゆらゆらと。やわらかな光をまとい、幻と現実の間を揺れ動く。
「ここは、通りと通りが交差する場所。
魔法だまりができて、時折、こういった泉が出現する。
いつ現れるか、わからない。現れても、いつまでそこにあるのかも、わからない。
ちょっとした、サプライズだね。
しかも、見える目のある者にしか、見つけられないときた」
店主は笑って、お茶を飲んだ。
「慣れてるね」
「そりゃ、何年もここに店を構えていればね」
「どうして見えるようになったんだろう」
「そりゃ、さっきの飴だ。あれは、ものが良く見えるようになる飴だから。
魔法蜜の採取は大変だったろう。サービスだ。
そら、泉が揺れている。今回はあまり、しっかりこっちに出現できてないようだ。
消えてしまう前に近づいて、のぞいてごらん。
何か未来が見えるかもしれないよ?」
店主に言われて、そうっと近づいた。
魔法でできた泉には、ゆらゆらと何かの影がうつっている。
いったい、何が見えるのだろう?
***
魔法横丁の街角風景。
ごちゃっとした感じと共に、ちょっと不思議空間になりました。