脳活日誌901号
実力とラッキー。
文藝春秋に掲載された沼田真佑氏の芥川賞受賞作『影裏』を読んだ。デビュー作で受賞するのは気持がいいだろうと感じた。選評を読むと一回で過半数を得たらしい。文章に対する評価がよかったようである。釣りの話を推進力にしてストーリーが緻密に展開されているのが、好評を得たのかもしれない。運も実力の内である。「賞は結局運次第」と島田雅彦氏は書いているが、一発で人生の進路を決めたことは、やっぱりラッキーなのだろう。
東北大震災を背景に据えながら、岩手の生出川での釣り人の情景を描いているのだが、こうした場面での情景描写が実にリアルに活写されている。才能ありと評価されたのはこの点かもしれない。物語は、今野という私と日浅という元会社の同僚だった人物との関係を通して、震災のこと、日浅と父親の関係を描こうとしている。ストーリーの結末は書かないが、文章力というものが作家の傾向を決定づけるから、感受性や作家としての視点が表現力として輝いているようである。褒めるしかないだろう。次の作品に期待したい。
読書会を三十数年続けているが、芥川賞の発表直後の受賞作をテキストにすることはなかった。8月の読書会の席で9月は沼田氏の『影裏』を読んでみようと話が決まっていた。私は本屋に予約までして、久しぶりに文藝春秋を買って、受賞作品を二度も読んで行ったのに、先日あった読書会では話題が転がり過ぎて、結局、島尾敏雄の『湾内の入り江で』という作品になってしまった。アルコールが入ってのワイワイがやがやになるから、こっちの方がいいとなると、コロッと変更してしまうのである。老人の関心ごとは直ぐに変わるのである。気楽なものだ。
みき
2017/08/27 10:28:20
ごま塩ニシンさん、おはようございます。
う~ん、なかなか難しいです(^^;)
文章がきれいで、格調高いと印象に残りやすいですけれど、他にもいろいろ要素がありますよね。
三島由紀夫さんやトーマス・マンの文章はとってもきれいで、格調も高いです。
でも、印象に残るのは太宰治さんだったり、野坂昭如さんだったり、また、アーネスト・ヘミングウェイだったり。
印象に残る文章って、何か自分の「波長」と一致するところがあるんでしょうね。
くろまめ
2017/08/26 16:10:57
朝に雨がパラリと降りましたが空が明るくなって
やっと晴れてくれました。
生乾きのお洗濯物をありったけ外に干しました。
やはりお天気いいと気持ちのいいものですね。