【お話】リトル・プリンス・バンパイア
魔界の小さな貴公子。そう呼ばれることもあるよ。ぼくは単に、ぼくであるだけなんだけど。
もらったステキコーデ♪:20
魔界の小さな貴公子。
ずっと、そう呼ばれていた。
ぼくの父さまと母さまは、魔界の有名な将軍で、
兄さまたちも、強くて勇敢な戦士たち。
でも、ぼくの牙は、小さくて。魔力もそんなに、強くなかった。
背中の羽もそれなりだけれど、でも、長くは飛べなかった。
父さまや、母さまは、雷をまといながら飛び、魔法を使う。
兄さまたちは、閃光のような切り裂きや、風の刃で戦える。
みんな、強くてかっこいい。聖なる番人とだって、互角に戦えるんだよ。
でも、ぼくは。何にもなかった。
強い魔力も、牙も。爪も。なんにもなかった。
いつも、守られてばかり。戦いには出ちゃダメだって。それはそうだね。だって、飛ぶのは遅いし、魔力だって、小さな火花が出せるぐらいだったもの。
そんな自分が、いやだった。
でもね。
ぼくにしかできない、ぼくだけの、魔法や力があったんだ。
教えてくれたのは、人間の女の子。
ハロウィンの日に、次元の境目がゆるんだ時に、
こっそり、人間界に行ってみた。
その時に出会ったんだ。
二人で、一日、遊んだよ。
あの子は小さくって、弱くって、
でも、自分にできることをあきらめないんだって、笑ってた。
自分が自分であること。それがいちばん、大事なんだって。
そうして、できることを見つけて、それをていねいに、心を込めて、
一所懸命、続けることが大切なんだって。教えてくれた。
別れる時には、おたがいがんばろうねって。またねって、手を振ってくれた。
そんなあの子に恥ずかしくないように、
ぼくは、それ以来。自分を見つめて、できることを鍛えて、伸ばしてきたんだ。
そうして、顕現したのが、あらゆる魔力を無効にする力。
聖なる番人だろうと、魔界の獰猛な獣であろうと。
ぼくの前では、無力になる。
それ以来、ぼくの名は、
あらゆるものの熱量を奪い、白き無に帰す、
絶無の魔将、白寞(びゃくばく)の小公子になった。
父さまや、母さま、領民たちのために、
兄さまたちと協力して、魔獣を率いて、戦う。この魔界の、平和のために。
そんな日々だけど、時に夢見る。
いつか。
いつか、また。人間の世界で。
笑って手を振ってくれた、あの子に会えるかな……。
***
仮面とマントが、妙にツボにはまりまして、購入してしまいました。
人間界の「あの子」は、成長したのちに、魔界の者と戦う聖なる番人になっていたりします。そして、宿命の出会いがある、と。