【お話】妖精の楽師
花香をつむぎ、星明りを集めて、わたしは歌を織り続けよう。夢に力が宿るように。
もらったステキコーデ♪:13
妖精の女王の名前は、ティターニア。
小さくて可愛らしい妖精のイメージは、いつからできたのだろう。
ティターニア。偉大な。巨大な。その意味の名前を持つ妖精の女王は、
もともと、荒々しく、力強い、精霊たちの母だった。
わたしの仕事は、楽師。
こちらとあちらを、ふらふらとさまよいながら、
花の香りを集め、星の光を集めて、
歌を、世界に織り込んでゆく。
歌織りの魔人。運命の紡ぎ手。色々な名前をつけられた。
わたしがしたのは、ただ、音楽を紡いで、歌を織った、それだけだったのだけれど。
最近、つけられた名前は、
ティターニアの楽師。
妖精の女王に認められ、その前で歌を披露した、
そんな楽師がいるのだと。世界に噂が流れたらしいね。
そうなのですか、と尋ねられても、
そんなことも、あったかな。としか、答えられない。
わたしはただ、歌うだけ。
歌って、紡いで、夢に力を与える。
時に、その力を求められ、
時に、宴の彩にと呼ばれる。
その中に、妖精の女王もいたかもしれないね。
貧しくて、飢えた子どもたちの前でも歌ったし。
変な顔をしているね。どなたも、わたしの大事なお客だよ。
わたしはただ、歌を織る。
貴賎に関わりなく。美醜に関わりなく。
賢い相手にも、愚かな相手にも。
人にも、人ならざる者にも。喜びに満ちた者たちにも。絶望にまみれた者たちにも。
歌いたい相手に、音を紡いで歌を贈る。
歌いたい時に、夢を紡いで世界に贈る。
その歌に運命を動かす力があったとしても、
それはただ、それだけの話。
大した事ではないんだよ。単にそれだけなんだから。
***
ちょっとトリックスター的な話になってしまいました。
妖精の楽師。ちょっと良いかなって。