【お話】時の結び目をほどいたら
時の流れに結び目をつけた人がいたみたい。ほどいたら、ほんの少しの春が手元に残ったの。
もらったステキコーデ♪:14
おや、おや。
フクロウに急かされて、見に来たら。
誰がこんなことをしたんだろうねえ。時間が凝って、結び目になってしまっているよ。
なくしたくない思い出でもあったのか。
困るね。こんなに結び目をきつく作られたら。他の時間までここにくっついて、こんぐらがっちまうじゃないか。
普通は、放っておいても、ほどけてゆくんだけどねえ。
やれ、やれ。ちょいと、手助けをしてやろうかね。
……なんとも強情だね。
なんて執着だい。ぎっちり固まっちまってるじゃないか。
んん? そこにいるのかい?
ああ。しがみついているんだね。
自分の形を忘れるほどに、願って、思って、
自分の爪ととげで、自分自身を傷つけて。そしてまた、しがみつく。
泣きながら。叫びながら。
なくしたくないと。
覚えているのは、それだけかい……?
ねえ、あんた。
なくなりゃしないよ。あんたの大切なものは。
忘れてしまっても良いんだよ。
思い出せなくなっても、それは時の恵みさね。
それでも、残るものがあるんだ。そういうものさ。
悲しみも、苦しみも、
時の恵みに任せちまいな。
誰もあんたを責めやしない。
あんたが忘れたくないと、しがみついている相手もね。
ただ、笑って、
楽しかったころの記憶を、かすかな感情にして。
そりゃ、痛みも苦しみも、消えるものじゃないさ。
傷は残る。でも、
自分を責めるのは、もうおやめ。
もう良い。もう良いんだ。
大丈夫、あんたの大切な相手だって、
決して、消えやしないんだから。
輝くものは、美しいものは、
人が忘れても、消えないんだ。
思い出せなくなっても、確かにあるのさ。
滅びるわけじゃない。なくなるわけでもない。
ただ、寄り添っていてくれる。
あたしはそれを、知っている。
何度も見てきた。本当さ。
だから、ほら。
握りしめたものを、ゆっくり。そう。指を、開いて。
大丈夫。世界が抱き留めてくれる……ほら。
会えただろう?
あんたの、大切な人の、微笑みに。
………。
ああ。
ほどけたね。
残ったのは、春の香りが一枝。
スイートピー。やわらかくて、あたたかい、幼い者たちのくすくす笑いと、
大切な相手への、愛情が。ほのかに香る。
うずくまるのも、時には良いよ。
泣くのも、わめくのも。必要な時もあるさ。
でも、それをやりきったのなら。また、立ち上がって、
歩き出す。よろよろしながらでもね。それが、残された者のやるべきこと。みっともなくても、なんでも。それが、次に、つなげるってことだから。
コツなんてないさ。ただ、
うまくやろうなんて思わないで、
みっともない姿で。歩いてゆけば良い。
それで良いのさ。祝福を。
あたしはまた、世界の中で、
時が澱まないように、見て回るからね……。
***
魔女のドレスで何かできないかなって思ったので。