ごま塩ニシン

新怪アウトプッター(1)

自作小説

   スマホの異変。
 由梨花が充電を終えたスマホを手にした瞬間、メロディーが流れた。どこかで聞き覚えのある曲の断片であったが、自分の着メロとは違っていたので不審に思い、寝室の窓際へ行って、スマホをかざしてみた。スマホを握った左手の親指が反射的にスイッチを押し、右の人差し指は液晶パネルを忙しく左右に動かしていた。この時である。不意に映像が映し出されたのである。男に向かって、女が足蹴りを入れた瞬間であった。二人は激しく殴り合いを始めた。叫び合う音声も聞こえてきた。
「なにこれ。どうなっているの。私に関係ないじゃん。」
 恐くなって電源を切ったが、いきなりの異変に再度スイッチをオンにする指先が震えた。こうした体験は初めてだったので対処方法が分からなかった。30秒くらいの間合いを置いてから、由梨花は恐る恐るスイッチに触れた。これ以降の異変は出てこなかった。作動は正常に戻ったようで、さっきの映像は錯覚だったのかと自問したくらいであった。
 通勤電車に揉まれながら、今朝のスマホ異変が由梨花の頭から離れなかった。会社に行けば、電子機器のマニアが沢山いるから聞いてみれば、解決策が見つかるだろうと、由梨花は奇妙な遭遇に、それほど心配はしていなかった。電子部品の卸売り商社に勤めていたのでスマホを自前で組み立てるくらいの技能を持った社員はいたからである。経理部に所属していた由梨花は月末の請求書処理に追われていたが、今朝の出来事について、同僚からどのような意見が聞けるのか、昼休みの時間が待ちどうしかった。

  • アメショ

    アメショ

    2018/01/15 06:05:05

    うん。スマホ使用の新聞小説ですね。現代的。

    短くていいよ。

    そのほうが、続くし、読みたくなる。