ごま塩ニシン

新怪アウトプッター(3)

自作小説

 振り返って、福村は「何を食べるの。」と訊いた。この時、福村の口臭が由梨花の鼻先を刺激した。姿勢を捩じると内臓が刺激されて、口臭が出やすい。
「福村君。昨日、餃子を食べたのでしょう。」
「へー。分かる?」
「ちょっと匂ったから。」
 この人、しっかり歯磨きしているのかしらと由梨花は疑問を感じた。彼女は匂いに敏感であった。だが、今はスマホの異変について福村の意見を聞くことが先決である。個人的な人間選択の時ではない。福村はみそ汁とカレーを注文したが、由梨花はホウレンソウの御浸しと天ぷらうどんであった。内容としては二人とも簡素であった。食品を受け取ると、レジーで社員証を出せば、給与引き落としになる。どこの会社でも見かけられる風景であった。
 食べながら、由梨花は今朝起こったスマホのトラブルを説明した。
「そんなことは、起こりうるはずがないけれどもね。」
 福村は前置きしてから、何を戯言を言っているのだという態度で薄笑いを浮かべた。
「だってさ。実際に、このスマホで発生したんだもの」
 こう言って、取り出したスマホを福村に渡した。彼は指先を素早く動かしていたが、1分くらいで由梨花に返した。
「君の言うように、もし、そのような現象が起こったとしたら、世界的に普及しているスマホ社会が大混乱を引き起こすよ。いわゆる通信の混線だね。今の技術では考えられない。まあ、あり得ない事象だね。」
「そうかしら。それなら、どうしてさ。私のスマホに奇妙な映像が不意に出たのかしら。あんた、私が夢でも見ていたと言いたいの。」
 福村の対応があまりにも不親切というか、真剣さがないので由梨花は失望であった。この人は、この程度しかないのか。まあ、販売営業だから技術的なことの知識が少ないのかもしれない。
「例えばだよ。スマホを落としたとか。コーヒーをこぼしたとか、トラブルを引き起こすような要因はなかった?」
「ぜんぜん、何もなかったわ。さっき言ったでしょう。充電してたって。」