ごま塩ニシン

新快アウトプッター(9)

自作小説

 平田総務部長は何かの功績を挙げたかった。M社の総務部長とは森岡代議士の新年名刺交換会で顔を合わせている。だから、全然、知らない間柄ではない。事前に連絡して事情を話せば、相互交流ができないことはない。それに販売営業部では取引関係にもある。
「思い切って、事情説明に私が行ってきましょうか。もっとも、コンピュータの技術的な説明もいりますから、吉岡室長も同伴してもらいますが・・・。」
 社長の反応を見ながら、平田は目を大きく開けた。
「そうだな。いきなり当方から切り出すというのは、どうかな。というのは、吉岡君が言っていたように、M社の方でデータの流失を感知しているかどうかだね。もしもだよ。全然、何も気づいていなかったら、当方から、こんなことがありましたと流失した書類を返すことで、先方のセキュリティ対策を強化してもらえばいいことなのだが、果たして、こうした行為が歓迎されるかどうかだね。他社から、お宅のセキュリティ対策は不十分です、と指摘されるなんて屈辱的なことだからね。逆に僕なら恥ずかしいと思うから。」
「なるほどね。それなら、しばらく頬かむりをして、様子を見ますか?」
 方針を決めるのは社長である。社長の気持ちが、どの方向に転がっていくのか、平田はビリヤードをしているようであった。どうも、社長は曖昧なまま事態を見過ごしたいように平田には思えた。
「実は次の日曜日に21世紀経済交流会のゴルフコンペがあるのだよ。たぶん、M社の山川社長が出てくると思うので、ゴルフ場で顔を合わすんだよ。ゴルフが終わってから、実はと、山川社長に言う訳にもいかないからね。」
「ああ、そんなご予定があったのですか。それなら、販売営業の方から、それとなくM社の様子を確かめてから、次の対策を練りましょうか。」
「そうだね。急いだ方がいいのか、様子見がいいのか、迷うね。まず第一に自社の情報流失がないこと、この確認が先決で、これと並行してM社との情報交換をどうようにしていくのか、こうした方向性で検討していこう。それには営業サイドからの情報収集を具体的に始める。これで、どうだ。販売営業部長の石橋君には、君から内々に頼んでみてほしい。専務から言うより、平田君の方がいいだろう。」
「分かりました。」
 平田は頭を下げながら、次期社長候補のダークホースと言われている石橋部長を相当に社長は意識していると推測された。

  • アメショ

    アメショ

    2018/01/22 06:05:28

    確かに、加工した方がいい案件と、前後無しに、上の確認無しに、おこなった、いい案件がある。
    この流出は、後者だ。まーサリラーマンのモチベで、こうなっちまうが。

    エイト?CMの名刺交換の奴みたいだ。