ごま塩ニシン

新快アウトプッター(10)

自作小説

 不可解なM社の内部文書がプリンターから打ち出された出来事から二日後、経理課では請求書の発送に追われていたが、社員の頭の中から異変現象が消えたわけではなかった。ただ、気にしたところで修正のしようがなかった。すでに、案件は上層部へ行ったので、ある意味、平社員の関知するところではなかった。一過性の手違いから起こった出来事であったのかもしれない。皆は観念したように沈黙していた。
 ロッカールームで着替えをしていると、ポケットに入っていた由梨花のスマホに音楽が流れたのである。自分の着メロではないが、聞き覚えのある曲であったので由梨花は曲の流れるままに放置して私服に着替えていた。ただ、何も操作したわけではないのに、どうして鳴り出したのか、不審であったが、タッチして切ればいいことであると軽く考えていた。
「その曲、私すごく好きよ。新藤マリの新曲でしょう。」
 隣で着替えていた新入社員の入江美佐子が言ったのである。
「そうなの。ふーん。私のスマホの調子が悪くて、いきなり曲が鳴るのるよ。」
「ええー。そんなことありますの。不思議ね。勝手に動き出すって、この間のプリンターの異常と似ていますね。」
 入江に言われて、由梨花は初めて気づいた。自分のスマホに発生した出来事と会社のプリンターの異常とは時空間が違うのに、現象としては持ち主の意図とは懸け離れた状態で発生している器機の異常ということになる。営業の福村慎平が言っていたことが思い出された。もう一度、異常現象が現れたら連絡するようにと福村は言っていた。確か、高校の先輩で技術開発室にいる湯之原孝一を紹介すると言っていた。
「美佐子さん。今から、寄っていかない。男子を紹介するから。」
「あら、本当ですか。興味あります。」

  • アメショ

    アメショ

    2018/01/23 06:26:00

    勝手に機械が動き出す。この文章が気になった。


    で、美佐子さんに「虫」が付くの?。

    アウトサイダー?節有難う。