ごま塩ニシン

新怪アウトプッター(13)

自作小説

「失礼ですが、お風呂に入りながら、スマホを使うことはないですか?」
 落ち着いた顔で湯之原は、いきなり入浴を話題にした。この質問に由梨花は一瞬、頬を赤らめてしまった。自分の裸を見透かされた思いになったからだ。由梨花にしてみれば、もう笑って答えるしかなかった。
「ええ、たまに、ありますわよ。でも、湯船に落としたりしたことはないです。」
 こう強く否定しながらも、由梨花は心の中で、いつも腰湯をしながらスマホを弄るのが大好きなのよ、と言いたかった。
「この機種は3年前に発売された製品で防水機能も付いていますから、そんなに心配することはないでしょうが、こうした精密機器は水熱に弱いですから、出来るだけ湿気のないところに置いておいた方が無難です。キッチンでも湯気の上がるところに置かないことです。」
「わかりました。なるべく注意します。」
 何か、湯之原に叱られているような雰囲気になった。
「タッチパネルの反応も悪くはないですし、表面的には傷もついていませんから、問題はなさそうですが、例えば、落とされたとか、椅子に座る時に軽くお尻で押し付けたりとか、そんなことはありませんか。」
「そんなことは一度もありません。」
 理系の割には表現力がソフトで、微妙な突っ込みをしてくる。湯之原という男は文系的な想像力を持っていると由梨花は感じた。
「このスマホですが、お借りして内部を分解してみたいのです。いかがでしょうか。私に器機の異常を分析させてください。」
 湯之原は涼しい顔でスマホの提供を提案したのだ。
「ええー。ちょっと、そんなこと。考えさせてください。」
 意外な進展に由梨花は仰天してしまった。眼を見開いて、湯之原の顔を真剣に見詰た。横にいた入江美佐子も戸惑って、両者の様子を伺うばかりであった。

  • アメショ

    アメショ

    2018/01/25 06:19:29

    理系が出て来た。


    スマホの内部か、頭の中か、その人か。
    現代のコミケのあざとさ。