新怪アウトプッター(19)
祝日だというのに協力してくれた業者に感謝しながら、連絡駅で別れると福村は夕方まで、どうして時間を過ごそうかと思った。映画でも見るかと繁華街をぶらついていると、背後から声を掛けられた。振り返ると先輩の湯之原がいた。
「どこへ行くのだ。」
「それより。先輩はどこへ。」
「家にいても仕方がないので、出てきただけ。」
二人とも独身なので、休日を持て余しているようであった。
「夕食には、ちょっと早いですが、飲み屋にでも行きますか。」
福村の誘いに湯之原が応じたので、商店街にあるチェーン店のすし屋に寄った。腰を落ち着けてから、福村は東条由梨花の家で見つかった、盗聴器のことを説明した。
「これからの重大問題だね。盗聴はネット社会に潜む毒素のようなものだよ。軽く見ていると、大変なことになる。盗聴器は性能が上がって、ハッカーの役割をもっているから。このまま放置すれば、ネット社会の足かせになる。」
湯之原は警鐘を鳴らした。
「僕も、危機感を持ちました。ところで、わが社で発生した、例の経理課のプリンター騒動ですが、何か進展がありましたか。」
福村の質問を受けて、湯之原が、にゃっと笑ったものだから、さらに「糸口でも見つかったのですか」と突っ込んだ。
「原因は先方のM社にあるのではなく、当社にある可能性が出てきた。」
「ええ。本当ですか。根拠があるのですか?」
「当社の文書管理ファイルを過去に遡って、調べてみたのだ。すると6年も昔のファイルにM社の取締役会の議事録が保管されていたんだ。ちょうど、僕が入社する2年前になる。それで業界紙で当時の状況を調べてみたのだが、あの当時、M社が海外のファンドから株の買い占め攻勢を受けていたらしくて、ハッカー攻撃を受けて、M社の文書が流失したという記事を見つけたのだ。わが社に当時、在籍していた技術開発室長だが、この人は、俺が入社した年にヘッドハンチぐされて、某金融機関の関連会社に転職しているのだよ。恐らく、この人がM社から流失した文書を、わが社の文書ファイルに取り込んだのではないかと、これはあくまでも、僕個人の推測でしかないが、こうした可能性がないとは言い切れないのだ。」
「M社の流失文書をネットから拾って来たということですか。」
福村は口を開けて、ホ~そうですかという表情をした。
「ヘッドハンチングされて、会社を辞めた人に訊くわけにもいかないだろう。」
湯之原は突き放すように言った。
「もし、そうだとしても。ファイルに格納されている過去の古い文書が、どういうわけでプリンターから出てきたのですか?」
湯之原の顔を見ながら、福村はビールの入ったコップをゆっくりと傾けた。
「僕も、危機感を持ちました。ところで、わが社で発生した、例の経理課のプリンター騒動ですが、何か進展がありましたか。」
福村の質問を受けて、湯之原が、にゃっと笑ったものだから、さらに「糸口でも見つかったのですか」と突っ込んだ。
「原因は先方のM社にあるのではなく、当社にある可能性が出てきた。」
「ええ。本当ですか。根拠があるのですか?」
「当社の文書管理ファイルを過去に遡って、調べてみたのだ。すると6年も昔のファイルにM社の取締役会の議事録が保管されていたんだ。ちょうど、僕が入社する2年前になる。それで業界紙で当時の状況を調べてみたのだが、あの当時、M社が海外のファンドから株の買い占め攻勢を受けていたらしくて、ハッカー攻撃を受けて、M社の文書が流失したという記事を見つけたのだ。わが社に当時、在籍していた技術開発室長だが、この人は、俺が入社した年にヘッドハンチぐされて、某金融機関の関連会社に転職しているのだよ。恐らく、この人がM社から流失した文書を、わが社の文書ファイルに取り込んだのではないかと、これはあくまでも、僕個人の推測でしかないが、こうした可能性がないとは言い切れないのだ。」
「M社の流失文書をネットから拾って来たということですか。」
福村は口を開けて、ホ~そうですかという表情をした。
「ヘッドハンチングされて、会社を辞めた人に訊くわけにもいかないだろう。」
湯之原は突き放すように言った。
「もし、そうだとしても。ファイルに格納されている過去の古い文書が、どういうわけでプリンターから出てきたのですか?」
湯之原の顔を見ながら、福村はビールの入ったコップをゆっくりと傾けた。
アメショ
2018/01/30 06:43:40
ビットコインのデーターかい。ちゅっこみ。
あと、文書があるだけいいわ。
ヘッドハンターは、兄がうけたことあるよ。でも、あいつ、教えるの下手だし。