ごま塩ニシン

新怪アウトプッター(20)

自作小説

「そこなんだ。起こり得ないことが、実際に起こった。これが問題なんだな。いろいろと考えてみたが、僕が到達した結論は、・・・・。」
 湯之原はビールを口に運んで、思案顔をした。理系の考えでは根拠のない理屈は言いたくないということでもあった。
「先輩。空想でもいいですから、考えつかれたことを言ってもらえませんか。」
 福村は湯之原の顔を見詰た。それは「早く言ってくれ。」との催促であった。
「これは、あくまでも仮定の話なのだが、サーバーの劣化からくるものではないかと思えて仕方がないのだ。最近、メーカーのデータの改ざん問題が騒がれているが、数十年前から行われていたというから、この不正がもたらす弊害について誰も追跡調査をしていない。しかし、電子信号の微妙な発信でコンピュータが動いているわけだから、あくまでも素材の純度が規定通りでなければならだろう。それが満たされていない。この結果、出てくる不規則な信号の変化がCPUなどの動作に、どのような変化を及ぼしているのか、この研究がなされていない。これが心配だね。」
「素材データの改ざんですね。不純物が混ざっているということでしょう。」
「そうなんだ。余計な不純物が混ざっている。」
 湯之原は、また思案顔になった。
 福村も一瞬、言葉が浮かばなかった。
「思い切って、仮説をいうとね。」
 湯之原は腹の中に収めておくことができなくなったのか、一気に言った。
「半導体というのは最初、異質な物質だった。それが電子信号に役立つ物質になった。これと同じようにデータ改ざんによる異物が、無数に広がることによって、一定の役割を持つようになったのはないかというのが、僕の仮説なんだ。」
「意味がよくわかりませんが?」
「そうだろう。根拠があって、言っているわけではない。だが、不純物が不純物でなくなって、半導体的な役割を持ちだしてきたのではないか。これを心配しているのだよ。不純物が独自の電気信号を放って、不純物同士で信号のやり取りを始めているのではないかと。これは湯之原個人の仮説でしかないが、古くなった文書サーバーの中で、今言ったことが起こっているのではないかと想像するのだよ。」

  • アメショ

    アメショ

    2018/01/30 06:45:28

    サーバーの劣化。。。

    一瞬、思った、コピー機の詰まり!みたいな。