おすがり地蔵尊秘話(13)
老婆は鍵を取りに奥に引っ込むと、「それではご案内させていただきます。」と縁側から降りた。屋敷の横は畑になっていたが、軽自動車が走れるくらいの、小道がついていた。約15秒ほど歩いたであろうか、外観は納屋のような建物であった。一応、玄関らしい木製のドアがあって、鍵が掛っていた。錆びついた金属音がして、ドアが開けられた。沓脱があって、老婆を先頭に三人が部屋に上がり込んだ。
お爺さんの死後、あんまり開けられていなかったのであろう、何か、かび臭い空気が漂ていた。雨戸も絞めらていたが、軋み音がしてガラガラと戸が開けられた。そこには不動産屋で見た小山の山裾を借景にした庭が開けていた。雨戸が解放されて外光が部屋に流れ込んで、明るくなり、最初に受けた黴臭い雰囲気は払拭された。
「ほー。想像以上に庭が立派ですね。」
私は正直な印象を言葉にした。
「そうですやろう。どなたさんに見せても、庭だけは、いいな、と仰います。義父が生きがいにしてきた風景ですからね。以前に、お茶会に使ってもらったこともあるのです。建物は古ぼけていますが、何せ、物置というか、農機具を入れる納屋でしたからね。お爺さんと言ってますが、義父が日曜大工みたいにして、コツコツと部屋の内装を、自分の好きなように改修しましたのですわ。そやから、天井を見てください。春日杉の木目が奇麗な天井板を使っているのです。」
こう説明されて、私は天井を見上げた。
「変幻自在というか。これは変化に富んだ木目ですな。」
「布団に入って、寝ながら木目を見ていたら、退屈しませんのや。義父がよく申しておりまた。見ている内に、何時の間にか寝てしまう。」
「そうかもしれません。それに床の間もいいです。ここに花でも活けたら部屋の雰囲気が変わりますね。」
不動産屋の横谷青年は自分の紹介する物件を賛美するように持ち上げた。
アメショ
2018/02/16 06:47:51
(個人的にね。DMメール便のアルバイトしてるけど、家や庭が、使わないと、ホント「朽ちる(くちる。」
その家の方の背景が、会うより、解る。怖いほど。
まー別に、豪邸や、外車がいいわけではないが。