ごま塩ニシン

おすがり地蔵尊秘話(21)

自作小説

 私がテーブルにカップを運んでいくと、藤森弁護士は恐縮しながら言った。
「実は、数日前に闇金のアジトに警察が踏み込んだ報道があったのですが・・。」
 こう言って、藤森弁護士は私の顔を伺うように見た。
「ああ。新聞を取っていないから、詳しいことは分からないが、ラジオのニュースで概略は知っている。それが、どうかしたのですか。」
「それがね。あそこまで一挙に踏み込めたのは、轢逃げ事故で亡くなられた古川静次さんの情報があったからなのです。警察も以前から内偵を続けていたが、アジトの特定が出来ていなかった。それが古河さんの情報からヒントを得て、警察が踏み込めたということなのですよ。もっとも、彼の喋ってくれた内容を、もっと取締りを強化して欲しいと私が警察に伝えたことから始まったわけなのですが・・。」
「ほお。そんなことがあったのですか。義弟の情報が役立ったということですね。」
 私は口を突き出すように応じた。
「そうなのですが、それだけで終われば、良かったのですが、警察の轢逃げ捜査の犯人捜しの様子を探ってみると、どうやら、古川静次さんを轢逃げした犯人は闇金グループの一員の可能性が出てきたのですよ。まだ、逮捕されてないので明確には断定できないのですが、恐らく、そうではないかと思います。」
「それならば、轢逃げ犯人の動機は仕返しということになるじゃないか。」
 驚きのあまり私は声を高くしていった。
「この推理は犯人の自供がないと確定しませんが、一連の流れから推測していくと可能性として考えられます。」
「うーん。」
 私は腕を組んでしまった。闇金なんかに手を出した奴が悪いと言えば、それまでだが、それにしても静次の考え方の甘さが遠因していると考えるより仕方がないものだろうか。藤森弁護士に依頼したのが間違いだったのか、私には判断がつきかねたし、こんなことを静次の妻や秀子が知れば、何と言うだろうかと思った。

  • アメショ

    アメショ

    2018/03/04 09:11:08

    嫌味。
    いい子だから、弁護士の世話には、いまだ、なってないが。
    リアル弁護士体験してみたいかも。(笑い