ごま塩ニシン

夜霧の巷(14)

自作小説

 事件事故の両面から警察は探りを入れていた。ユーチューブに出された映像も慎重に検討対象にしていたが、まず、事情を聴くためにユーチューブに映っていた車の行方を調べていた。ところが投稿の3日後になって運転手が警察署に出頭してきたのである。理由はユーチューブの映像を見て、「お前の車じゃないのか。」と友人、知人に言われ、話題になり過ぎたことからの反省であった。このままの状態で知らんふりを続けておれば、悪いうわさが立てられるのではないかと、本人が不安になって警察に顔を出した。受付の際、本人が言った心境であった。
 交通課の警察官が対応した。名前と住所、連絡先を控えると、こう言った。
「それで何を、おっしゃりたいのですか。」
「いえ。別に何も、ないのですが。先日、運河の橋の上を通過した時に酔っ払いが、道の真ん中に飛び出て来たものですから、急停車したんですよ。それで窓を開けて、危ないじゃないかと言ったのです。」
 青年は地域経済研究所勤務という肩書を持つ青垣勇作と名乗った。
「ああ。そうですか。それから。」
「いえね。あの時は雨の中の出来事でした。誰か、写真に撮った奴がいて、ユーチューブに投稿したものですから、みんなの関心が集まって、注目されたんです。私としては思いもよらないことだったの、すごく迷惑しているのです。」
 青垣勇作は火の粉を払うような仕草をして、腕を左右に振った。
「ああ。あれね。私も見ましたが、あれだけなら、誰の車で誰が運転していたのか、分かりませんよ。」
「そうですか。」
 こう言って、青年は安堵した表情を見せた。だが、これが青垣の演技であったのだが、このことを警察官は見抜くことができなかった。
「お話によると、あの車はあなたのもので、あなたが運転していたということでいいのですね。それで雨の中、歩いている酔っ払いが車に接近してきたので、停車した。危ないと注意をした。こういうことですね。」
「おっしゃる通りです。」
 警察官は聞き取った内容を一応メモ書きして残したが、交通事故が発生したわけでもないので警察としては対処のしようがなかったと言える。
「確認ですが、酔っ払いは、その後、どうなりましたか。」
「関わり合うのもなんですから、車から距離を置いたので、サッとスピードを上げて現場から離れました。その後のことは分かりません。」
 この青垣という青年は最後のセリフを言いに来たかったのである。

  • アメショ

    アメショ

    2018/04/15 08:22:45

    交通事故の話。
    どこから、コメントしよう。
    自動運転は、誰責?まで、きてる。
    シェアは広がらないらしい。。。
    いわゆる、ご都合!。
    一家に、1つで、全部いいのだ。