【お話】夜明けが来るまで。
湖に映る偽りの世界。夜明けが来るまで、カラスウリは、時の魔法を秘めて光る。
もらったステキコーデ♪:8
時の魔法は、さりげない。
始まるのは突然で、終わった時には、誰の記憶からも抜け落ちていたりする。
見つけることができた、ぼくは、幸運なのか。
ただの暇人だったと、証明されただけかもね。
見つけるには、手がかりがある。
いくつかの、キーワードがあるんだ。
鏡に映った、さかさまの世界。
偽りのなかの真実。
昨日と今日がすれちがう、時計の針が、文字盤の十二で重なる瞬間。
こうしたキーワードに気付いたら、
そこを見た瞬間、刹那の時が引き伸ばされて、永遠に近くなる。
その瞬間に、足を踏み入れることができたなら。
ゆるり、ゆらりと、輪を描く、魔法の力を見ることができるんだ。
そう、
ただ、見るだけ。
できることはそれだけ。
過去と、現在と、未来が折り重なって、
いつかだれかが見た、誰かが思い描いた、
誰かがつぶやいた、「その時」とすれ違う。
それだけ。それが時の魔法。
変えることはできない。
それはもう、終わってしまったことだから。
覚えていることも難しい。
それはいつか、遠い未来で起きることだから。
ただ、見るだけ。
そこに何の意味があるんだと、
そういう人もいるだろう。でもね。
ぼくは、それで良いと思う。
確かに、そこにいた人たちと、
いつか、存在するだろう人たち。
その人たちの、夢と。力と。存在と。
いっしょにいられる。そんな瞬間だから。
だれも一人じゃないって、
そう思える。
それだけでも、すごい魔法じゃないかな?
さて。
湖に映るは、さかさまの世界。
美しくも偽りのこの世界から、
本当のものが現れる。ほら。
カラスウリが光る。
時の魔法を帯びて光る。
甘くて暖かいココアは、僕の好物。
まだちょっと肌寒いからね。甘いこれを飲んで。夜明けまで。
時の魔法に、ただ、感謝して。世界に幸あれと、そう祈ろう。
かつて、と、いつか。
そこにいた人々が。命が。幸せであるように。幸あれ、と。
ここにいるぼくも。かつての、そして、いつかの、
誰かによって、幸あれと。そう、祈られてきたのだから。
***
ノスタルジアな感じで。寒い時に飲むココアは良いよね。