【お話】思いは、どこかに残る。
卒業した先輩の、読んでいた詩集。面影はいつか、おぼろになっても。かつてあった思いは、どこかに残る。
もらったステキコーデ♪:2
手にしたものは、
あなたが読んでいた詩集。
卒業した先輩の面影を、
今も、どこかで探している。
この静かな図書館で、たまにすれ違う、
わたしたちは、それだけの関係だった。
語ることはなく、
隣り合う事もない。
ただ、互いに本を手にして、すれ違う。
それだけの時間が、大切だった。
それだけの時間が、宝物のように思えた。
あなたは、わたしを知らない。
でもわたしはいつも、ここであなたの姿を探していた。
静謐な時間。
ページをめくる音だけが、わたしとあなたの間をつないでいた。
春は過ぎて、
夏も去り、
秋が深まる中、ふと、
目が合った気がした。
でも、それだけ。
わたしたちは、図書館でたまにすれちがう、
それだけの関係であり続けた……。
やがて、冬が来て。
あなたは図書館から姿を消し、
また巡り来る、春に。
ここには、わたしだけが、残された。
誰も知らない。
こんな思いがあったことなど。誰も。
ただわたしが、覚えているだけ。そして、
この思いもいつか、
時の中に埋もれて、消えていくのだろう。
それでも、
何かは残ると、信じたい。
静謐な時間。静かに文字を追っていたあなた。
そんなあなたを見ていた、わたしの、
かすかな胸の痛みは。どこかに、何かの形で残るのだと……。
***
ちょっと切ない感じで。
図書館の先輩が読んでいた詩集。
堀口大学の訳詩集とかですかね。
しの
2018/10/10 14:09:52
>辰之さん
何かを思う時間と言うのも、実は大切。忙しすぎて、何か考える時間もないと、心がどこかすりきれていくから。答は出なくてもいい。何かを思う。それでいい。
辰之
2018/10/03 13:57:59
秋って人思う時間が出来るんですよね
人知れず回り見渡りしたりして
あのころはよかったなぁ
と
特に静かな夜にね