それでも、雨に濡れることもなく、この軒下に留まる幸せもあることだろう。
ただ、雨の降らない軒下には、陽が差すこともない。

陽射しを求めて軒下を出ても、灼熱と渇き。
それでも飛び立つその先に、なにがあるのかは燕も知らない。
ここに留まる幸せもあったことだろう。
なぜ留まらないのか、それは燕も知らない。

巣立ちの時、飛ぶことを恐れ、諦めた燕は、ずっと空を見続け、いつか空を見ることも忘れる。
空を見なければ、後悔や未練も、いずれ忘れ行く。
ただそれが執着ならば。
ただその執着に、まだ唇を噛むことがあるならば。
時は戻らず、しかし時は流れず。
短くなり行くこの先を嘆かなければ、時はまた進む。