ヨベルの年
業界の裏話といいましょうか、
わたしの拙い経験から学んだ「こんなことあるある」ですが・・・
2月と8月は、稀に不動産に「めっけもん」が放出されることがあります。
放出されると言っても、
一般の購買層に情報が流れるわけではありません。
業者間で「美味しい話」が飛び込んでくるのが、
2月と8月に多いんです。
ちょいと前の2月の28日、
昼を少し回ったころに、知り合いの不動産業者から連絡が入りました。
「○○(地名)の隣の家、買う?」
隣の家というのは、わたしが所有する賃貸物件で、
その隣が、売りに出たけど「買うか」という打診です。
不動産では、昔から「隣は倍でも買え」といいます。
相場の2倍の価格でも、絶対買えという言う意味です。
「いくら?」
「200」
「買う」
即決です。
相場の倍どころか、5分の一にも届きません。
ここがわたしが所有する物件の最安値の「土地付き一戸建て」です。
大坂府堺市の南海高野線「初芝」駅が最寄り駅です。
大阪府下でおそらく、2番目か3番目の高級住宅地です。
そこの土地付き一戸建てが、200万で売りに出たのです。
(しかも、その隣をわたしがすでに持っています)
いろいろイワクつきの物件でしたが、
実は所有者の手形落ちが、その日の午後3時だったのです。
つまり、家を売らないと不渡りを出してしまうのです。
内覧や、広告など出している暇はありません。
あと数時間のうちに、決済をしないと倒産です。
その倒産回避のために、わたしのとこへ白羽の矢が当たったのです。
もちろん即金で200万持って銀行へ行きました。
(決済はたいてい銀行の応接室で行われます)
わたしが差し出したお金200万円は、
その字のごとく羽が生えたように、
債券業者の手に渡っていきました。
彼らは、それぞれ奪い合うように、お金を持って帰ったのです。
あとには、売り主(前の所有者)様と、
売買担当とわたしだけが残されました。
美唄担当は、わたしの性格をよく知っています。
「もし、買い戻されたいのであれば、
7年以内でしたら、200万で土地建物、お返しいたします」
これは、わたしはクリスチャンで
聖書に基づいた「ヨベルの年」を考えて、
土地の譲渡を神の見地から考えたものです。
トーゼン担当は「またかっ!」という顔をしています。
いえ、でもだが何と言おうと、わたしは、人の窮地を見越して、
その足元をすくうような土地の売買はしないと決めているのです。
ですから、7年以内に、お金が出来たら、
その土地は、買った同じ値段でお返しいたします。
売り主様は、とても驚いて、
「なんで、そんなことを言うんですか?」とお尋ねになりました。
きっとお売りになりたいわけでは、なかったでしょう?
今日の3時という時間に縛られて、
やむなくお手放しになったのでしょう。
そのお気持ち、お察しいたします。
・・・と、申し上げました。
売り主様は、
「もう、納得がいきました」と、笑ってお帰りになりましたが、
それから7年たっても、買い戻しの話はありませんでした。
売買担当者が、
「はなちゃんは、いつもそういうけど、
クビ括るとこ助けたんやから、
気にせんでええんですよ」というんです。
気にしますよ。
うち(「弱小零細吹けば飛ぶよな将棋の駒・悪徳不動産株式会社)は、
いつも、即決現金決済で買い叩きますが、
人様の不幸を手ぐすね引いて待っているのではなく、
「ぜひ、お返ししたい」という気持ちで物件をお預かりしているのです。
不動産は、人とのご縁で動くものです。
お金だけで行き来すると、
すむ人が不幸に見舞われるような気がするんです。
2月になると、いつも思うんです、
今月は、急に現金をかき集めるようなことがなければいいなあって。
2月の末日が過ぎると、なんだかほっとするんですよ。
ああ、買わないですんだって。
8月は、暑さのせいでしょうかね、
悲壮感はあまりないんですが、
2月の28日はイヤだなあ。
寒くって雪なんか降ってくると、
つい「雪の降る街を」を歌ってしまい、
不動産を買ったのに、「悪いことをしたなあ」って、
人の足元を見る商売気質が恨めしくなるんです。
わたし、不動産屋に向いてないんだろうなあ。
大喜
2019/02/11 07:38:24
良い話を聞かせていただきました
「隣は倍でも買え」は何度もきいた言葉です
もうけ至上主義の世の中にあって、
はなこさんの「ヨベルの年」の話を読ませていただいて
某質屋さんの話を思い出しました
想いのあるお客の質草が質流れになることを大変哀しんでいました
質草を取りに見えたお客が来たことを大変喜んでいました
まぎまぎちゃん
2019/02/11 01:37:40
素敵なはなこさんに出会えたことが素直に嬉しいと思います。
どうやって得をするか、自分のお財布を膨らませる事に知恵を働かせる人がほとんどなのに。
・とんとん・
2019/02/11 00:07:57
売主のかたは、はなこさんのお申し出があったからこそ
気持ちに整理がついたかもしれないですね。
そして、買い戻せなかったにしても、救われたような気持になったその時の事を
ふと思い出して、人生は悪い事ばかりではないと、しみじみされている事でしょう・・・
another
2019/02/10 23:12:08
教義の中にではなく、
はなこさんの信仰心の中に神を感じます。
タキ
2019/02/10 21:56:10
まぁ、何と言うか土地や物って「捻」が入りますからね基本的に。
もし取引で上手く行った時はその分を誰かに還元すれば良いと思います。
そうすればその幸せがまた自分の所に帰って来るので。
そうやって物事は本来回ってる気がします。
最近は世の中がそれをガン無視してるので変な方向にばかり物事が進んでるんですよね・・・・・
とり合絵図
2019/02/10 21:53:40
今年はいろいろ経済ヤバそうですが。
八百万の神々よ、日本をお導きください。(∩´∀`)∩
らんなー
2019/02/10 20:49:50
寒い心にマッチで火を灯したような温かさ…(*´ -`)~♪
1本200万円………あ、でも維持費やらなんやらがかかってくるのか…
ふぃろふぃる
2019/02/10 20:43:22
業界では、決算の時期なんですね・・・
大学入学・卒業による転居で、部屋が空く時期という認識しかありませんでしたわー
それでも、お得な物件という基準も不明でしたが
Mt.かめ
2019/02/10 20:28:00
はなこさんのお気持、ステキすぎます。
200万で手放した売主さんも「ああ、この人に買ってもらってよかった」
と思ったんじゃないでしょうか。世知辛い世の中だと悲しい思いをしてた所に
きっと心の中にぽっと暖かい気持ちがわいてきたのではと思います。そんなお話を
聞かせてもらって、わたしもほんわかと温まりました♪