【お話】天空の城の午後。
天空の城の午後。魔物の討伐任務も大事だけど、ティータイムも重要よね。
もらったステキコーデ♪:13
地上に、魔物が増えて来た。
わたしたち、天空騎士の出番も増えてくる。
わたしたちの拠点は、空に浮かぶ大陸の城。そこから各地に降りて、討伐任務を行なう。
年頃の娘も多いっていうのに、毎日、毎日、訓練。訓練。討伐、討伐。ああ、忙しいったら、ありゃしない。
休みなんて、ないも同然。髪はばさばさ、肌はボロボロ。どうやってケアするかは、乙女たちの悩みの種。
妖精の泉の水で、化粧水を作ったり。
天界のハーブで、アロマテラピー。
ヘアオイルと髪用ビネガーは、薬師の秘伝の配合。あそこの薬師の腕が良いとか、ここの薬師は最近、手抜きだとか。女騎士が集まったら、そういう話題で盛り上がっていたりする。
こういう話題が、ストレスの発散になっていたりするしね。
地上の歌を集める人もいれば、花を眺める人もいる。みんなそれぞれ、自分だけの癒しを持っているの。
いつもいつも、張り詰めてばかりじゃ、いつかぷつんと切れてしまうから。
どう時間を使うのか。どんな風に自分をいたわり、休ませるのか。長く騎士を続けるためにも、これ、大事な事なのよ。
わたし?
わたしの癒しは、ティータイム。
茶葉にはちょっと、こだわりがあるの。
任務の合間に、地上の産地を巡ってお茶をさがして。
そうして集めたこだわりのお茶を、隙間時間に飲むの。
地上が、大変なことはわかってる。
わたしたちの来るのを、必死になって待っている人がいるのも、知っている。
くだらないことに時間をかけるなと、怒る人がいるのも知っている。
魔物に家族や友人を殺された人が見たら、きっと、怒り狂うのでしょうね。実際、そうされたこともあるわ。
天空騎士は傲慢で冷酷。そういわれているのも知っている。
でもね。
わたしたち、道具じゃないのよ。
いつでも使える、疲れない、壊れない、便利な道具。だから、なにをぶつけても良い。そんな風に思ってない?
勝手な期待はしないで。
わたしたちは、わたしたちの信念でもって戦っているけれど。
いつでもどこでも働いてくれる、都合のよい道具じゃない。心のある、命のある、存在なのよ。
だから、わたしはお茶を飲む。
時に歌い、時に花を眺め、あつまって、肌や髪の手入れにきゃーきゃー言うの。
そうしてまた、任務に向かう……。
昨日、花の好きだったあの子は、討伐に失敗して殉職した。
おととい、髪に良いオイルを教えてくれたあの人は、仲間をかばって戻らなかった。
わたしもいつかは、どこかで散る。
でも、それまでは。このひとときを、大事にしたい。
自分の時間を愛おしんで、……自分自身が大切なものだと、思いたい。
わたしの命にも、意味はあったと。
もう少し。あと、五分ほど、待ってね。
この一杯、飲み終わったら、……次の任務に向かうから。今だけ。この一杯だけ。待っていてね。地上の人たち。
***
天空の騎士の独白。少しの休憩時間。
もう少しのんびりした話にしたかったんですが。切羽詰まった感じになってしまった(^^;