【お話】妖精王からの恋文。
あら、本だと思ったら、…妖精王からの恋文だったわ。ふふ。一文字ごとに花びらが飛び出してくる。
もらったステキコーデ♪:6
今日は、家のことはお休み。
久しぶりに、木陰で読書。
あら? こんな本、あったかしら。
覚えがないわ。どなたかからの、贈り物?
変ね。タイトルも、書いた人の名前もない……でも、表紙はしっかりとした装丁で、ていねいに作られている。
開いてみましょう……あら?
あら、あら、あら。
一文字、見るごとに、光が飛び散る。
声に出して発音すると、花の香りが漂う。
ひらひらと舞うのは、花びら? 小鳥の歌声?
あら、まあ。
手紙じゃない。え、どなたからの?
たぶん、……妖精王さんね。
このあいだ確か、お会いしたわね、そういえば。
お茶とお菓子をさしあげたけれど、これってそのお礼状かしら。
えーっと、なになに。
『いとしき君、いとけなき君、
風にそよぐ一輪の花のごとき乙女。
はかなく、しかし凛として、
人の世にありて輝く。
夜明けの光の輝かしさは、その瞳に。
ほほえみには、木漏れ日の光が、声には、せせらぎの楽し気な笑い声が宿り、
森の木々の木の葉を揺らす、風と光を見るごとに、そのいとけなさと輝かしきを思う。
乙女よ、乙女よ、光と影のうつる一瞬に生きるもの。
いとしき人の子の乙女よ、すこやかに美しくあれ。』
………。
……………。
………………………。
誰のこと?
え、……恋文よねこれ。なんだかそんな感じ、なんだけど。
でもこの、花のごときとか、夜明けの光、とか、
わたしみたいな、小さなころは本の虫。大きくなったら、家族のためのおさんどんに明け暮れる、肌のお手入れもテキトーで髪の毛もぼさぼさ、
親兄弟からも、親戚の男連中からも、「女子じゃない」「残念な存在」って、言われたい放題の存在にいう言葉じゃないわよね!?
宛先、間違えたんじゃないの、これ!?
***
間違いじゃないです。とりあえず。
妖精たちは、心根の美しさをまず、見るので。
力ある存在と出会ったとき、人間の反応はふつう、
畏怖や恐怖から逃げるか、利用したいとおもねるか。
彼女の場合、びっくりしたのちに、お客様だわ、と思って、家庭をあずかる者として、下心なくもてなした。自分にできる精一杯で。
それを妖精たちは評価したわけです。
ただし彼女の場合、あまりにも周囲の人からぞんざいに扱われてきてたので、贈られた言葉が受け止めきれず、意味不明状態に。
女性が磨かれるのには、周囲の人の言葉や扱いが大きく影響します。
「きれいになったね」「すてきだね」という一言があれば、意識して身ぎれいにし、自分を整えるようになっていく。
年頃ではなくても、女の子がいる家族は、そのあたり気を付けてあげないと、
ひたすら自分を犠牲にし続けたり、自己否定でいっぱいの娘さんになっていくので、
言葉を。花にお水や太陽の光をあげるように。娘さんに、あげてください。